2月下旬から3月にかけて、国内女子ツアー「ヤマハレディース」が行われる名門・葛城ゴルフ倶楽部の練習場には9時半を過ぎると、プロゴルファーが集まってくる。芹澤信雄を中心とした藤田寛之、宮本勝昌、西山ゆかりら『チームセリザワ』の面々だ。約1カ月の間に3日間の合宿を毎週行うこの葛城合宿は、20年以上前から定番行事となっている。
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チームみんなが若かった頃は、一緒にトレーニングをしたり、練習場のネットに向かってラケットでテニスボールを打つ練習もしていたが、現在、芹澤は60歳、藤田は50歳になり、47歳の宮本も「テニスボールを打つ元気はない」。芹澤も「トレーニングは各自でやって、今は特別なことはあまりしない」という。
一般のアマチュアがスタートし終わる10時くらいから練習場で打ち始め、みんなで昼食。午後はハーフラウンドを行い、また練習場でボールを打つのがルーティン。全員で行う決まった練習メニューはなく、緊張感のある部活動というより、和気あいあいとしたサークル活動に近い。サークルの部長、芹澤自身もシニアツアーに向けて練習するが、ときおり他の選手の打席に近づいてアドバイスを送る。
葛城合宿のきっかけは芹澤や宮本が住む御殿場の寒さだった。「葛城がある袋井市と御殿場市では気温が5度くらい違います。葛城は春先から半袖でプレーできる暖かい日もある」と宮本はいう。ただ暖かい場所に集まって練習しているだけはない。それ以外のメリットもあるというのは藤田。
「1人で練習するより、何かあれば芹澤さんにすぐに聞けるのは大きいですね。それに開幕前に宮本プロや上井(邦裕)プロといったレベルの高い選手と一緒に練習するのはなかなかできない。お互いに刺激し合えるんです。ここにはシニア、レギュラー、チャレンジ、女子のレギュラー、ステップ、プロを目指す子たち(研修生)もいる。芹澤さんに教えてもらうだけでなく、自分が若い選手に教えることで分かる発見もあります」。
宮本も芹澤の存在が大きいと語る。「合宿ではいつも芹澤さんに1個か2個宿題をもらって、持ち帰ろうと思っています。それは20代の頃からずっと変わっていません。自分が60歳になったらどうなるんだろうって思いますよね。いつまで続くのかって。芹澤さんがいなくなったら僕のゴルフは終わっちゃうかもしれない……」
昨年の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」に出場した藤田、宮本に30年近く頼りにされる芹澤自身は「プレーヤーであること」にこだわりを持っている。「自分がプレーできなくなっても教えることはできるとは思う。でも自分がプレーしていた方が、試合の流れとか、マネジメントとか、精神的なことを教えられる。僕はティーチングプロではないので、スイングだけ教えるのとは違います」。それが『チームセリザワ』のメンバーが長く活躍できる理由なのかもしれない。
芹澤は、女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」で西山ゆかりのバッグを担ぐ予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となった。出演を予定していたスポンサー関連のイベントもすべてなくなった。そんな状況だが、「逆にここで合宿する日数が増えた」と笑う芹澤。3月下旬には、今季のシニアツアー予選会に挑む。
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