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池江璃花子の人間力に思う【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

たった1枚のショットで心根の強さ、美しさが伝わり、感動を呼び、人々にエネルギーをくれる。アスリートの力を改めて強く感じた。
競泳の池江璃花子が披露した1枚の写真だ。白血病との戦いを続ける池江は、18日にSNSにかなりのベリーショートヘアの写真をアップ。東京五輪のワールドワイドパートナーであるスキンケアブランドのSK-2とのコラボレーション企画、フォトダイアリー“This is me”からのショットは、強い意志を感じさせる澄んだ瞳が印象的なものだった。昨年2月の病気発覚後、治療で抜けた髪が生えて来たばかりの姿で「この自分自身に誇りを持っているので、隠す必要もありません」と綴っている。
東京五輪の金メダル候補筆頭といわれながら、大会前年に病気が判明。それでも、常に自分の気持ち素直に発信してきた池江。ウイッグやニットキャップを被るのではなく、今回はありのままの姿を見せることで、見る人に勇気を与えた格好となっている。「このメッセージが一人でも多くの方の希望になればうれしいです」と書いている。
日頃は、競技で結果を出すこと、そこに向かって努力する姿を見せることで人々に感動を与えるアスリート。だが、見る側は必ずしもそれだけを見ているわけではない。意識するかどうかは別にして、その人間性や行動などを垣間見ながら、応援したり、力をもらったりしていることが多い。知らず知らずに、アスリートとしてだけでなく、一人の人間としての魅力を追っていると言い換えてもいい。
世界中が未知のウイルスとの戦いに疲弊し、平穏な日常すら送れない状態が続いている。そんな中、凛々しく、それでいて口元に笑みを浮かべたような池江の表情と言葉が、どれほど人々の心を動かしただろうか。
目標としていた4年に1度の五輪が延期され、目標を見失いかけたアスリート仲間や、日々不安にさいなまれる人々に、どれほど勇気をくれただろうか。
日頃、スポーツの取材を続ける中で、いい意味でも、そうでない意味でも人間力がアスリートを形作っていると感じる機会は多い。新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、ほとんどのスポーツを見る機会が奪われている今、19歳の池江が見せてくれた姿と心が、渇望をどれほど補ってくれたか知れない。
人間味あふれるアスリートが持つ力の大きさを、こんな時だから余計に強く感じる。フラストレーションがたまる今だからこそ、多くのアスリートがまた、池江の姿に刺激を受けたのではないだろうか。それがまた、魅力あふれるアスリートを生み出すに違いない。（文・小川淳子）

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