「トラベラーズ選手権」は36歳のダスティン・ジョンソン(米国)の勝利で幕を閉じた。3日目にはキャリア自己ベストの61をマーク。が、最終日は「フェアウェイを十分にとらえられなかった。パーならグッドスコアと思ってプレーした」
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優勝争いの大詰めは苦戦気味ではあったが、2位に1打差で通算21勝目を達成。2019年の「WGC-メキシコ選手権」以来、「久しぶりに勝てて良かった」と珍しく饒舌に喜びを語った。
コロナ禍からの再開3戦目は目まぐるしい1週間だった。開幕前のPCR検査でキャメロン・チャンプ(米国)が陽性判定を受けて棄権。続いて2人のキャディの陽性判定に伴って、ブルックスとチェイスのケプカ兄弟(米国)とグレアム・マクドウェル(北アイルランド)が棄権。家族の陽性判定を知らされたウェブ・シンプソン(米国)も棄権。金曜日にはデニー・マッカーシー(米国)も陽性、棄権となった。
続けざまの陽性判定と棄権が出たことは、ショッキングな出来事だった。だが、その事態を受けて米ツアーが感染防止のためのガイドラインをようやく見直したことは、大きな前進だった。
ガイドラインには、PCR検査の結果を待つ間、選手の試合会場への入場や練習施設使用は「OK」と記されており、その規定は当初から疑問視されていた。
最初の感染者となったニック・ワトニー(米国)が結果待ちの際にコースの駐車場や練習場で目撃されたり、誰かと会話を交わしたりしていたことは「ワトニーにそうすることを許可していたツアーの責任だ」と、米メディアは厳しい論調で批判していた。
その規定を米ツアーはなかなか変更せず、さらなる批判を受けていた。だが、「トラベラーズ選手権」で感染者が相次いだことで、ようやくガイドラインが見直され、検査結果が出るまで(陰性と判定されるまで)試合会場への入場が禁じられたことは、大きな変化であり、価値ある前進だった。
自らコロナ感染を疑ってPCR検査を希望したジェイソン・デイ(オーストラリア)を急遽1人でプレーさせることを決め、第3ラウンドのペアリングを変更した米ツアーの対応も、1つのモデルケースとして活用されるはずである。
現地入りしていた米メディアは「ローリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、ルーク・ドナルドなど多くの選手がマスクをして練習するようになった」と驚き混じりで報じていた。日本人の感覚からすれば、さほど驚くことではないだろう。だが、これまでマスクへの馴染みが皆無だった欧米人がスポーツの場で率先してマスクをすることは、とんでもなく大きな変化であり、選手も米ツアーも着実に前進している。
そんな米男子ツアーの試行錯誤と歩みは、米女子ツアーにとっても参考や手本になりつつある。男子から1カ月半以上も遅れて7月31日から再開を予定している米LPGAは、初戦の「ドライブ・オン・選手権」を3日間の無観客試合の形で開催後、8月6日からの「マラソン・クラシック」で観客を入れての4日間のフル開催へ移行しようとしている。
翌週の「レディス・スコティッシュ・オープン」と「AIG全英女子オープン」のスコットランド2連戦は開催が可能なのか?米国や世界各国からスコットランドへの選手たちの移動と安全は確保できるのか?
そこが米LPGAと関係者の最大の懸案であり、スコットランド2連戦の開催可否は7月8日のZoom会議で検討されることになっているのだが、その際、手探りの前進を続けている米男子ツアーの動向は“世界で唯一の参考資料”とされるはずである。
手本となる米男子ツアーの選手たちは、不慣れな無観客試合への対応の仕方を自分なりにつかみつつある様子だ。ジョンソンは再開初戦は予選落ちだったが、2戦目で17位タイ、3戦目で優勝。「毎年最低1勝以上」の記録は実に13年目に突入した。
「ギャラリーはいないけど、それでもプレッシャーはある」(ジョンソン)
メジャー3勝のスピースは、無観客での開催が正式に決まった今年の全米プロを睨み、「無観客のメジャー大会を制した初の選手」となることを新たな目標に据えるのだと言っている。
そう、モチベーションは自分自身で上げていく。ニュー・ノーマルも大事だが、当たり前のことを忘れずに行うことも肝要である。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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