6月の国内女子ツアー開幕戦「アース・モンダミンカップ」で5年ぶりとなるツアー通算4勝目を挙げた渡邉彩香。2016年にリオ五輪に出られなかった悔しさを経験し、苦しんだ時期を乗り越えて掴んだ優勝の裏には、欠かせないドリルがいくつかある。そんな“復活ドリル”を教えてもらうために、渡邉の地元、静岡・伊豆の凾南ゴルフ倶楽部に早速お邪魔してきた。今回はプロでも難しいといわれる“直ドラ”だ。
渡邉が「自分の調子を確かめるため」にやっているのがこの練習。「私は直ドラをコースで使うことはほとんどありません。では、なぜ練習に取り入れているのかというと、直ドラはボールに対するクラブの入りがとてもシビアで、スイング中に自分の体がちょっとでもブレてしまうとクリーンにヒットすることができないからです」と自分の悪いクセが出ていないか、チェックの意味合いが大きいという。確かに高くティアップされているボールなら、どんな軌道だろうとボールに当てること自体は難しくない。
実際にコースで打つための練習ではないため、ボール位置もいつものドライバーショットと同じ位置。「いきなり芝から打つのは難しい、という方は、最初はショートティなど低いティを刺してやってもいいと思います。慣れてきたらティを外してみましょう」と渡邉は言う。また、練習場がマットの場合、芝以上に難易度が上がるため、まずは一番低いティから試していくのもありだろう。
では、どういう球が出ればいいのか。「直ドラは難しいですし、調子のチェックですからそこまで“いい球”は求めません。大事なのは球がしっかりと上がっていくこと。トップしたり、ダフッたりしたりせずにフェースに当たって、ライナーみたいな弾道でも上がっていけばいいショットです。だからといって、決してボールをつかまえるための練習ではありませんから、無理につかまえにいかないでください」。直ドラである以上、フェースのやや下に当たるが、トップはダメ。上がっていかなければ、軌道がどこかがおかしいのである。
“いい球”が出ない理由として渡邉が挙げるのが、スイング軸のブレ。「インパクトでヒザが伸びたり曲がったり、頭の位置がズレていたり、前傾が起き上がってしまうなどなど。そうなれば、クリーンにボールをとらえることができません。私の悪いときは、体が伸び上がってしまい、フェースの下に当たることが多いです。そうならないようにお腹に力を入れて、伸び上がらない、浮かないことを意識しています」とアドレスで作った重心を崩さないことが大事だ。
また、ボールをヨコからシャローにとらえられなければ、“いい球”を打つことは難しい。渡邉はスイングを改造について「私はダウンスイングでコックを解くのが遅くて、引きつけ過ぎていたので、早めにほどくように意識してビジネスゾーンを作った」と話している。つまり、上から叩きつけすぎても、逆にクラブが下から入りすぎても“いい球”は出ない。また、カット軌道のスライスも同様。クラブがボールに適切な入射角で入っていなければ、やはりどこかにブレがあるということである。
そうやって、この練習で自分のミスの傾向を把握していけば、コースに出たときの修正にも役立つだろう。まずは実際に直ドラをやってみて、自分がどういう球が出るのか確かめることが大事だ。
渡邉彩香(わたなべ・あやか)/1993年9月19日生まれ、静岡県熱海市出身。大東建託所属。2012年のプロテストに合格すると、持ち前の飛距離を活かし13年に初シードを獲得。翌14年の「アクサレディス」で初優勝を挙げた。15年も2勝を挙げるなど活躍を見せたが、その後はスランプに。18年にはシード落ちも経験する。苦しい状況が続いたが、20年のアース・モンダミンカップで復活優勝を果たした。
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