「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」でツアー初優勝を挙げた笹生優花。最終日はスコアを9つ伸ばして2位に4打差をつけ、さらにプロデビューから2戦目の19歳57日でのスピード優勝は国内ツアー歴代7位の年少記録とインパクトを残した。今年3月までは高校生だった笹生。この快挙に成田美寿々や穴井詩を指導するプロコーチの井上透氏はいう。「全然驚かなかった。初年度から賞金女王まである」と言い切る。
実は井上氏は、米国カリフォルニア州のトリーパインズGCで行われている「世界ジュニアゴルフ選手権」で、中学3年生だった笹生を見ている。井上氏はジュニアゴルファーの育成に昔から力を入れており、毎年、世界ジュニアの日本代表を選抜して帯同している。
「畑岡奈紗と笹生優花の優勝争いをずっと見ていたんです。そのときから優花はスケール感とか持っているものが全然違いました。奈紗もすごい天才だと思ったんですけど、がっぷり四つな感じ。完全に2人は別世界でした。排気量が違いましたね」
世界ジュニアのカテゴリーは女子の15〜17歳。畑岡と笹生は学年で3つ離れているが、畑岡の誕生日は早生まれの1月で、笹生は6月生まれ。7月開催の大会で2人は、同じカテゴリーで対戦していたのだ。そのとき優勝したのは畑岡。最終日に6つスコアを落としながらも、2打差の2位に入ったのは笹生だった。
その後、日本にいて世界をよく知っているコーチを探していた笹生が、井上氏の指導を受けることになる。「僕が教えていたのは、彼女が高校生だった2年くらいです。フィリピンにいたので、日本に帰ってくる2カ月に1回くらいの頻度で見ていました。スイングはもともと完成されていたので、基本はそれを大事に育てたというだけですね。最初に見たときからフィジカルがメチャクチャ強くて、本当にすごい才能を感じました」と井上氏は振り返る。
笹生のスイングはいかにして完成したのか。「スイングはマキロイ、パッティングはタイガーを真似した」と本人は言っている。
「彼女は小さい頃からマキロイに憧れていて、単純にマキロイのスイングを真似して、あのスイングになった。その結果、ありとあらゆる最先端の飛ばしの要素が入ったわけです。それを狙ったわけではなく、最初から資質があった。他の選手とは筋力が全然違います。彼女は意外と腕が短いので、身体的に振り遅れにくいというのもある。腕が長かったりすると、ゆったりめのテンポになったりしますけど。そこに関しては、僕は本当に何もしていない。僕は勝つために何が必要かっていうことを、調整しながらやっていただけですね」
ドライバーの飛距離は「250〜260ヤード」と本人は控えめに申告しているが、NEC軽井沢では280ヤード飛んでいるホールもあった。飛距離はすでに世界でもトップクラス。そしてアイアンの球も高かった。
「アイアンの入射角はすごくダウンブローなので、(球が少し沈む)洋芝でも打ち込みながらボールを上げることができます。フィリピンでゴルフをしていたからっていうわけではないですけど、(コースの)空間が広い国じゃないと、あれだけ強く振ろうっていう感覚にはならないでしょうね」と井上氏は語る。
これからどんな選手になっていくのか。「優花は今すぐ世界ランキングのトップ20に入れる実力があると思います。年間10勝して2億円を稼ぐみたいなことをやりかねないし、初年度に賞金女王を獲っても驚かない。奈紗が日本で1シーズン戦っていればどうなるか。それを優花で想像すればいいんです。彼女はアメリカに憧れているから、早くアメリカに行きたいと考えていると思います」。
初年度に賞金王を獲ってアメリカに渡った選手といえば、松山英樹もそうだった。東京五輪はフィリピン代表で出場すると公言している笹生だが、その後は日本国籍を取得するつもりだという。ともに日本国旗を背負って畑岡と海外メジャーで優勝争いをする姿が、近い将来見られるかもしれない。
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