想定外の事態に対応するには経験がモノをいうのか。ルーキー、笹生優花の初優勝で幕を閉じた「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」。フィジカルの強さを武器にした笹生の圧倒的な強さは、この先楽しみだが、一方で上位にベテランが数多く入ったことには大きな意味が感じられる。
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2位には産休明け2戦目の若林舞衣子(32歳、3勝)と藤田さいき(34歳、5勝)が入り、4位には有村智恵(32歳、14勝)。8位タイには藤本麻子(30歳、1勝)、10位タイには前田陽子(35歳、2勝)と、トップ10までの13人の中に、30代の選手が5人入っている。
今季のシード選手の平均年齢は史上最年少の26・3歳。30歳前後でツアーを退く選手も多く、QTからの若手もどんどん出てくる昨今では、30歳を超えると立派な“ベテラン”だ。1998年生まれの黄金世代、2000年生まれのミレニアム世代などの台頭が目立つ状況を考えると、今回の結果は際立っている。
コンディションが極めて難しい状況になれば、ベテランの経験値が生きるのだが、今回は特にそういうわけではない。最終日には勝った笹生のスコアは「63」で、若林が「64」を出しているほどだ。そうなると、毎週あるはずの試合がなくなり、調整が難しい状況が、この結果につながったと考えられる。
新型コロナウイルス感染拡大のため、試合が次から次へと中止になった後のシーズン2戦目。1戦目の「アースモンダミン・カップ」からは4週、間が空き、この後も1週の空白ができる。こうなると体調やゴルフそのものの調子、モチベーションなどの照準を試合に合わせなくてはならない。
シーズン中は毎週、試合があるのが当たり前になった昨今の女子ツアーでは、まず1年間を戦い続ける体力が必要になる。経験があまりない選手では、夏場や後半戦に入ってバテてしまうケースも少なくない。だが、今年は特別。トレーニングの時間も練習の時間も十分にあり、試合だけがないという状況だった。だから、シーズンに入っても、試合が“ルーティン”になっていない。若手の強みである“勢い”が生かせない。ベテランのしぶとさが生きてくる。
プロなのだから毎試合、ベストコンディションで戦うのがあたり前、という考え方もある。しかし1年間プレーしていれば、調子の波はあって当然だ。いい時に上位に入るのはもちろんだが、そうでない時にどれほど踏ん張れるかという部分に、選手の底力が表れる。
意識している場合も、経験則の場合もあるが、百戦錬磨のベテランは、そのことをイヤというほど知っている。だから、こんな状況でも強いのだろう。
来週の「ニトリレディス」からは4試合続けて試合が行われることが決まっている。その後も中止の試合はあるものの、ある程度続けて試合が行われる見込みの女子ツアー。そんな中、若手が“勢い”を生かす機会がどれだけあるのか。そして、ベテランが強さとしぶとさをどれだけ見せるのか。コロナ禍だからこそ、息の長いスポーツであるゴルフの面白さが浮き彫りになる可能性は高い。(文・小川淳子)
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