勝みなみが、年々減少するゴルフ人口を増やすために立ち上がった。「自分が大好きなゴルフをもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という勝が思い描く夢とは?
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勝がゴルフ好きの祖父の影響でゴルフを始めたのは8歳のとき。最初は「ゴルフ場の松ぼっくりがメチャでかくて、それを集めて工作するのが好きでした。みんなに自慢できるのも楽しかった」という。その後、大の負けず嫌いの少女は、小中高の全国大会から日本女子アマチュアゴルフ選手権まで、アマチュアタイトルを総なめすることになる。
「ゴルフが楽しいからプロになりたいと思ったし、仕事にすれば毎日ゴルフができる」と、19歳でプロ転向してからも順風満帆だった。ツアー3勝を挙げ、わずか2年でトッププロの仲間入りを果たした。
大好きなゴルフが職業になった今も、「嫌だなとか面白くないなって思うことはあまりないです。悩んでいるときや苦しいときに、どうしたら良くなるかを考える時間もすごく大事。『人生の勉強をしてる』、『生きてる』って思える。ゴルフは天職ですね」と言い切る。
実際、若手の中では珍しく勝にはコーチと呼べる存在はいない。スイングの動画をスマホで撮って、自ら動きをチェックしている。「ずっと1人でやってきたから、コーチがほしいと思ったことはないですね。ゴルフを始めた最初の2年くらいはスクールに通いましたけど、もう自分のスイングができているから、どうすれば修正できるか、だいたいわかってくるんです」。コーチを付けずにトッププロに登りつめた正真正銘の天才なのだ。
■犠牲を払っても世界のトッププロの技術が見たい
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、勝だけでなくプロスポーツ選手全体を取り巻く環境が一変した。「本当だったら毎週毎週試合があって、ゴルフ漬けの日々でした。でも自粛期間中はあまり外に出られないけど練習はしなくてはいけないし、ゴルフに行ってもインスタに上げちゃ行けないのかなと思ったり。でもゴルフは仕事だしって、いろいろ考えた。バランスを取るのがけっこう大変でした」と振り返る。
6月には「アース・モンダミンカップ」で約4カ月遅れて国内女子ツアーが開幕したが、その後はまたしばらく試合がない状態が続いた。モチベーションがなかなか上がらない中、海外メジャーの全英オープンの女子版、AIG女子オープンの出場チャンスが巡ってきた。しかし、出場するには犠牲が伴う。日本から会場のスコットランドに渡るときには隔離期間はないが、日本に戻ってきたときには14日間の自主隔離期間が必要になる。全英に出場すれば、日本のトーナメントに2試合出場できない。それに長時間の移動による感染リスクも高まる。でも勝に迷いはなかった。
「80%は行くという気持ちで決まっていました。せっかくチャンスがあるなら、いろんなことを経験したい。日本にはないコースでプレーできるというのもありますし、世界のトッププロの技術が見られるということもあった」。“全英”という目標ができたことで、練習へのモチベーションが戻ってきた。
■ゴルフをやったことがない子供たちが、気軽に始められる機会を作りたい
これまで勝が成長できたのは、“試合”があったから。しかし、いまプロを目指すジュニアたちには、成長するための試合がない。そこで勝は、スポーツギフティングサービスを利用してファンから寄付を募り、ジュニアがゴルフに触れる場を提供したいと考えている。
「私の地元、鹿児島のジュニアのゴルフ人口が年々減ってきているのもあって、まずはゴルフをやったことがない子供たちでも、気軽に始められるような機会を作れればと思っています。『ゴルフってこんなに楽しいんだ』、『ゴルフを始めてみようかな』と思ってくれたら嬉しいですよね。私たちがジュニアだったときも、もっと同級生がいれば楽しいなと言っていたんです」
■プロ仕様のセッティングでジュニアの試合があったら面白い
そして、ジュニアスクールなどを開催してゴルフの裾野を広げていった先に、勝はもっと壮大な夢を描いている。
「すぐには実現できないかもしれませんが、鹿児島には1試合か2試合くらいしかジュニアの大会がないので、試合を作りたいと思っています。そこで私がコースセッティングを担当して、プロの試合で回っているような気分でプレーしてもらいたい」
勝は中学生のときからプロの試合に出て、狭いフェアウェイや深いラフ、厳しいピンポジションを経験してきた。それが国内女子ツアー史上最年少となる15歳293日で優勝という快挙につながった。そして今は、世界最高峰の海外メジャーの舞台が成長の糧となっている。自分と同じことを鹿児島のジュニアにも経験させたいと考えているのだ。
「その子たちがプロになったときに『ジュニアのときにこういうピンポジあったな』って思い出に残るような大会にできたらいいなと思います。もしかしたら、その子たちが何年後かにツアーに出て、私と一緒に戦うことになるかもしれない。『実はこうだったんだよ』なんて楽しく思い出を語れたらいいですよね」
あまり難しいセッティングにしたら、ジュニアにとっては悪い思い出になりそうだが、勝自身はそれもゴルフの醍醐味だと信じている。
「私はコースが難しければ難しいほど燃えるタイプ。日本女子オープンのセッティングとか好きですね。プロのトーナメントはジュニアの試合では絶対に切らない(くらい難しい)ので、そういう試合が1試合でもあれば面白いんじゃないかと思います」と目を輝かす。
勝のゴルフ伝道師としての気持ちは、ジュニアにだけ向いているわけではない。「ゴルフは小さい子からお年寄りまでできるスポーツなので、年齢を問わずゴルフの魅力を知ってもらいたいです。どんどんゴルフをやる人が増えて、ゴルフが日常になってくれればいいなと思っています。そのきっかけに自分がなりたい」。そこで、スポーツギフティングサービスでファンから寄付を募ることを決めた。
最後に勝は色紙にメッセージを書いた。
『ゴルフで笑顔を』
そこにすべての思いが詰まっている。
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