“ゴルフの革命”、“ゲームチェンジャー”…。ブライソン・デシャンボー(27歳・米国)の「全米オープン」優勝の翌日、米メディアにそんな見出しが大きく躍っていた。
狭いフェアウェイに深いラフ、超高速グリーンで難攻不落のウイングド・フットGCでただひとりのアンダーパーで勝利。「この勝利はゴルフの未来を変えることになるのだろうか?」と論争が始まった。
6月、新型コロナウイルス感染拡大で中断されたツアーが再開されたときに、デシャンボーはふた回り以上も大きくなって登場した。体重は10キロ近く増え、筋肉増量。ゴルフの科学者らしく食事制限からプロテイン摂取まで徹底的に管理、スイングスピード、ボールスピードも研究しつくしロフト角5.5度のドライバーの飛距離は380ヤード超えも当たり前。「これからゴルフの革命が起きる」と豪語し、7月には「ロケット・モーゲージ・クラシック」で勝利したが…、多くの人は信じなかった。
ところがこうしてメジャー制覇、しかも2位に6打差をつける圧勝。「これはゴルフの革命になるのかのしれない」と考えざるを得ないようだ。
「好むと好まざると、パワーゲームになっていくのは仕方ない現実」とザンダー・シャウフェレ(米国)。「デシャンボーがすごいのはドライバーの飛距離ではない。あの深いラフから打ち出すパワーがこの戦いを制した」と話す。
実際にデシャンボーの4日間の平均飛距離は325.6ヤードで6位。1位はダスティン・ジョンソン(米国)の333.6ヤード、2位はマシュー・ウルフの333.5ヤードだった。さらにフェアウェイキープ率の4日間平均は45%。3日目に至っては21%と低迷している。
ちなみにその3日目を終えた夜、デシャンボーは真っ暗になっても照明をつけた練習場でドライバーの調整をし続けていたのだが…。
「ブライソンのプレーは素晴らしかった。しかし本来はフェアウェイを捉えショット力で勝負するべきもの…。ブライソンはこのウイングド・フットGCのプレーするべき形ではないと思う。それでも彼は自分の方法を見つけ出して勝利した」とローリー・マキロイ(北アイルランド)。さらに「現行のルールを最大限に利用している」とデシャンボーの“アームロック・パッティング”を指摘した。
果たして今後デシャンボーのように体重を増やして筋力アップしてくる選手が増えるか? そこは疑問だが、パワーゲームに向かっているのも事実。「ゴルフにとっい良いことか悪いことか、分からない」とマキロイ。しばらくは論争が続きそうだ。(文・武川玲子=米国在住)
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