<日本女子オープン 最終日◇4日◇ザ・クラシックゴルフ倶楽部(福岡県)◇6761ヤード・パー72>
今年の女子ゴルファー日本一の称号は、21歳の原英莉花がつかみとった。トータル16アンダーまで伸ばし、2位の小祝さくらに4打差をつける圧勝劇。黄金世代3人目のメジャー女王が誕生し、世代の通算勝利も21勝まで伸びた。
誇らしげにトロフィーを掲げる原英莉花【大会フォト】
最終18番のグリーン上。3mのバーディパットこそわずかに外れたものの、その後のウイニングパットを落ち着いて流し込む。「バーディパットを外して、シーンとしたような気がして(笑)」と、右手のガッツポーズは少し控え目。それでも、昨年6月に「リゾートトラスト レディス」でツアー初優勝を挙げた時のような涙は今回はなく、いつも通りの明るい笑顔で日本一になったよろこびを噛みしめた。
3日目終了時点で4打差をつけていた2位の小祝さくらとともに、2日続けて同じ最終組で回った。1番パー5では4mのチャンスを決め幸先のいいスタートを切ったが、その後はガマンの展開が続いた。6番パー4では、この日唯一となるボギーを喫する。しかし、この時の心境は今までに感じことがないものだった。「ボギーが来て“楽しいな”と思いました。なんかゴルフっぽいじゃないですか。気持ち悪いですよね(笑)。でもここでスイッチが入りました」。すると8番ですぐにバーディが来た。
「あそこは大事な場面だなと思いました」。今回の優勝をつかむうえで、勝負所と振り返ったのが後半の12番だった。11番でバーディを1つ積み重ねた後のパー5がそれだ。残り250ヤードのセカンドショットを、「パー5でバーディを獲るため」に今週から再投入した3番ウッドでピン20ヤードの花道まで運んでいく。この後は3mと寄せ切ることができなかったが、「読みにくいライン」を読み切ってカップにねじ込んだ。「きょう一番しびれましたね」。流れを切らさないためのこの“クラッチパット”が、13番での3連続バーディにもつながった。
このメジャー大会は、“持ち味”を思い出す舞台にもなった。「自分が気持ちいいと思うのは、攻めるゴルフをしている時なんだなということを実感する4日間でした」。いまやツアー随一の安定感を誇る小祝が、精度の高いショットをピンに絡めてバーディを奪うスタイルを見て、「私も果敢に狙いました」。ボギー、ダブルボギーを恐れるがあまり、最近は“安全策”にすがることも多くなっていた。「勝負をかけないと流れに乗れない場面でも、逃げていた。攻めたいのに攻めないのは楽しくない。先週それに気が付いて、それで3番ウッドも入れました」。やはり、これが原英莉花のゴルフだった。
ショットの調整をするため先週、師匠のジャンボこと尾崎将司のもとを訪れた時には、あまりに自信がなさそうな表情だったため『来週オープンだろ!』と喝を入れられた。過去5回、日本オープンを制した人の言葉で「気持ちが入った」。そしてきょう、高校時代からたくさんのアドバイスをもらってきた師匠と同じ日本タイトル保持者になった。
優勝会見の席で、そんな師匠からの『英莉花はパッティングさえ良くなれば、トッププレーヤーになれる。この緊張感の中で、いいプレーができたのも、その証拠である』などつづられたメッセージが読み上げられる、満面の笑みを浮かべた。「ジャンボさんには2勝目、2勝目と言われてきました。それをナショナルオープンで達成できました。ちょっとだけ自信を持って報告にいけます」。日本一尊敬している人に、胸を張って日本一になった姿を見せにいく。(文・間宮輝憲)
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