「なるほど。いつもこんな気分でプレーしている男性ゴルファーが多いのか」
改めて、そう実感した。ワーケーション実証実験に参加した折、プレーしたサニーカントリークラブ(長野県)でのこと。ここには、黒、青、白、赤に加えてさらに短いサニーティというものが設定されている。18ホールで約1500ヤード短いセッティングだ。
ゴルフは、自分の飛距離に合ったティを選び、ハンディキャップをつけることで老若男女が一緒に楽しめる。それなのに、日本では黒はチャンピオン、青はバック、白がレギュラー、赤はレディースと呼ばれ、さらにシニア向けとしてゴールドティがあったりする。ティをプレーヤーが自由に選択するのではなく、知らないうちに押し付けられている場合が多い。
筆者のように飛距離のない場合、通常、赤(レディースと呼ばれることが多い)ティを使用するのだが、それでも、パー4のセカンドショットはほとんどウッドかユーティリティ。距離的に、それが当たり前だと感じていた。
ところが、18ホールの合計距離が4504ヤードのサニーティでプレーしてみると、セカンドショットの多くはショートアイアン。時には白ティからプレーしている男性をアウトドライブすることもあったほどだ。つまり、適正距離の適正なティを使っているということになる。そう、赤ティでさえ、適正ではないことがほとんどというわけだ。
「いつもみんなこんな感じなの? ショートアイアンでパーオンのチャンスが当たり前ってことがこんなに楽しいなんて」。ウッドでグリーンを狙うゴルフも十分に面白い。だが、それとは全く違う感覚に、違うゴルフの良さを実感した。
距離だけではない。おざなりに作られた赤ティ(この多さは、経験した者でないとわからないかもしれないが)は、とんでもないアングルで打ちにくかったり、傾斜がきつかったり、下の状態が悪かったりすることも少なくない。残念ながら「赤いティ? 作っときゃいいんだろ」というおざなりな感覚が露呈してしまう。アリバイ的な赤ティというわけだ。
サニーティは違った。ワーケーションのため9ホールしか回れなかったが、18ホールプレーした人の証言も併せると、みな平らで、アングルもライもきちんと作られていた。
サニーCCだけではなく、千葉夷隅GCのグリーンティや、PGMのピンクティなど、赤より距離の短いティを設置するコースは増えつつある。だが、ゴルファー自身の意識がもっと変わっていかないと、せっかくのゴルフの良さが半減してしまうことになる。
自分より飛ばない人のスコアや飛距離に対して「どうせ赤からだろう」という発言。年齢を重ねて以前より飛ばなくなった人に、同じティを使うことを強要する姿勢。公式競技でもないのに、使うティを決めつけることなどもってのほかだ。
ゴルフは、ダイバーシティ(多様化)が叫ばれる現在の社会にぴったりと合ったスポーツだ。ツアーであれ、レッスンであれ、それに関わるプロたちは、そのことをもっとアピールしてはどうか。それぞれのゴルファーに適したティを使って楽しむことの楽しさ。お互いをリスペクトしあった上でプレーすることの素晴らしさは、どんな形でも伝えられる。女子プロにできることはさらに多いに違いない。(文・小川淳子)
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