<樋口久子 三菱電機レディス 最終日◇1日◇武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)◇6585ヤード・パー72>
首位に立っていた勝みなみとの6打差を逆転してのツアー初優勝。昨年11月のプロテストに合格しルーキーイヤーに臨んでいる西村優菜が、後半の5バーディを含む8バーディ・1ボギーの「65」をマークし、トータル11アンダーで大逆転劇を演じた。
西村優菜 初めての“口づけ”【大会フォト】
2000年度生まれのプラチナ世代の一角で、すでに優勝を果たしている古江彩佳を筆頭に、安田祐香、吉田優利ら強豪がひしめくなか、世代2番目のチャンピオンに輝いた。
悔しい経験が生きた。9月の「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」では3日目を終えて単独首位に立ったが、最終日に崩れて7位タイ。「女子プロ選手権のときは守りに入ってしまった。スコアを意識しすぎた部分があった」。バーディを1コも奪えずに4ボギー。そのときの悔しい気持ちが、今回の初優勝につながった。
「攻める気持ちを忘れない」と臨んだ最終日は、首位を走る勝みなみが序盤からスコアを落とした。首位と2打差に迫って迎えたバーディが獲りやすい9番パー5。先にチャンスにつけた西村だったが、その目前で勝がチップインイーグルを奪った。パーに終わった西村とは4打の差が開いたが、それでも西村に焦りはなかった。
戦う相手は自分自身。やるべきことは決まっていた。「攻める部分を大事にしようと思って、そのマネジメントもできたと思います。強い気持ちでプレーできたのは女子プロ選手権があったからで、守りに入らずにできた」と、11番でバーディ。14番でバーディを奪い2打差に迫ると、そこから3連続バーディ。16番で追いつき、18番でもバーディを奪い勝を振り切った。
「正直、(勝選手は)飛距離もでる選手なのでバーディは必須だと思っていた。その中で自分のマネジメントをしないといけないと思って、集中してバーディチャンスにつけられていた」。キレ味するどいアイアンショットを連発。奥のピンに対し、手前に着弾させてピンまで転がし上げるという方程式が崩れることはなかった。
唯一18番パー5のセカンドは「ダフりました(笑)」と、元々レイアップの予定だったが、思いのほか飛ばず。それが残り115ヤード。ピッチングウェッジのフルショットの距離に止まったことで、これを1メートル弱につけてウィニングパットにつなげた。
アマチュア時代は日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームにも所属し、海外試合の経験も豊富。プロとしてのルーキーイヤーはコロナ禍の影響でデビューが6月にズレ込んだが、8月まではドライバーの不調に苦しんでいた。身長150センチの西村にとっては飛距離が出ないぶんフェアウェイキープが必須。「曲がったことがなかったのに、それが崩れたことでパニックになってしまった」。開幕戦の2日目には「83」を叩くなど、2戦連続で予選落ちを味わった。
そこからコーチとスイングを直し、持ち味の安定感を取り戻すと、尻上がりに浮上した。難コースの小樽CCで行われた「ニトリレディス」でトップ10に入ると、女子プロ選手権で優勝を争い、先々週の「富士通レディース」でも4位タイ。着実に今回の勝利へと結びつけた。
「自分の中では(優勝は)早かったなという感じはしていて、うまく修正できたのもありますし、あのショットの悪さからここまで持って来られたのも成長だったかな」。ルーキーらしからぬ修正能力と、強い気持ちで戦ったすえの優勝だった。
これで2021年末までの出場資格は確保し、見据えるのはさらなる成長だ。「もちろん優勝はたくさんしたいけど、トップ10にいる回数が多ければチャンスは増えるので、トップ10に長くいられる選手が強い選手だなと感じています」。
常に上位争いを演じ、チャンスが来たときに今回のような猛チャージを見せる。レギュラーツアーでもっとも低い150センチの西村が、これからも大きく輝きそうだ。(文・高桑均)
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