最新ゴルフニュース

多彩でユニーク、その筆頭はデシャンボー【舩越園子コラム】

トッププレーヤーたちの姿が無く、世界ランキング50位以内は昨年覇者のブレンドン・トッド（米国）ただ1人だった今年の「バミューダ選手権」。サドンデス・プレーオフを1ホール目で制し、勝利を挙げたのは48歳のブライアン・ゲイ（米国）だった。米ツアー通算5勝目。しかし、4勝目から今日までの道程は長かった。
スリムな頃のデシャンボー…マスターズではどうなってる？【写真】
「ずっと不調で苦しかった。コースに出ると僕のゴルフは悲惨だった。でも、みんなが『キミは再び勝てる』と言ってくれた」
周囲の励ましに支えられながら諦めずに戦い続け、2013年以来、実に7年ぶりに遂げた大復活優勝だった。
興味深いことに、9月から始まった新シーズンの開幕シリーズ8試合中、40歳代のチャンピオンは、スチュワート・シンク（米国）、セルヒオ・ガルシア（スペイン）に続いて今大会のゲイが3人目になる。若年化に拍車がかかる昨今、そしてこのコロナ禍の中で40歳代の中年選手たちが次々に勝利していることがとても嬉しく感じられる。
世界ランキングという尺度で見れば「低い」位置づけの選手たちが、最終日はこぞって猛追をかけ、1日に7つも8つもスコアを伸ばすアグレッシブなプレーを披露してくれたことにはたくましさを覚えた。
27歳のオリー・シュナイダーヤンズ（米国）は、日本の金谷拓実が今年受賞したアマチュア最高峰のマーク・マコーマック・メダルの2014年の受賞者だが、15年のプロ転向後は成績が安定せず、今大会は末の弟ルークとともに推薦出場していた。
バッグを担いでいたのは、すぐ下の弟ベン。3兄弟が1大会で勢揃いするのは、きわめて珍しい。米ツアー初挑戦だった弟ルークは予選落ちしてしまったが、レアで温かい状況をフルに生かした長兄シュナイダーヤンズは最終日に5つ伸ばして3位で終了。そんなファミリー物語に米ゴルフ界の層の厚さやゴルフ文化の深さが感じ取れた。
これから始まる「ヒューストン・オープン」では、翌週の「マスターズ」に向けトッププレーヤーたちがどのようにギアアップしていくかに注目が集まることだろう。
ヒューストン・オープンはコロナ禍においては米国内で初めてギャラリーを入れることになる。1日わずか2000人限定とはいえ、感染リスクを憂慮して出場を見合わせる発言をしていたフィル・ミケルソン（米国）も、結局、前言を翻して出場を決めた。ミケルソンがメジャー前週に試合に出るのはルーティンだが、松山英樹の出場は珍しい。
だが、そもそもコロナ禍の変則日程で迎える秋のマスターズそのものが「珍しい」というより「初」なのだから、挑む選手のほうも「珍しい」や「初」にどんどんトライすべきときである。そして米ツアーは選手の顔ぶれのみならず、取り組み方や挑み方も多彩でユニークだ。
マスターズ優勝候補の筆頭に挙げられているブライソン・デシャンボー（米国）は、その典型。10月の「シュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレン・オープン」出場後の4週間を自身のマスターズ準備期間に充て、コーチのクリス・コモらとともにテキサスの自宅で猛特訓中だ。
さらに体重を増やすため高カロリー食を摂り続け、さらに筋力を増すためのウエイトトレーニングやスピードドリル、体のケア、そして打ち込みなどをこなし続けている。すでにドライバー飛距離が403.1Yを超えたことも自らSNSで発信。しかし、その際のドライバーは“公言していた”48インチではなく45.5インチだった。
「48インチは重いし、長いし、コントロールが難しい」。だからこそ、48インチを使いこなせるよう、さらなる体重アップ、筋力アップに挑み続けているデシャンボーのスタイルは、前代未聞、史上初の「マスターズへの備え方」といっていい。その成果、その結果を見る日が待ち遠しくてたまらない。
文/舩越園子（ゴルフジャーナリスト）
<ゴルフ情報ALBA.Net>