12月1〜3日にかけて行われた国内女子ツアー増枠予選会(QT)のファイナルステージ。最終日のプレーを終えた原江里菜は、「まだ(上田)桃子先輩のように同じ世代の選手も頑張っている。若い選手に負けていないところを見せられるように思いっきりプレーできればいいですね」と、にこやかに宣言した。
来年行われるレギュラーツアーでは、現在10試合程度で出場選手の枠が増える見込みが立っている。その優先出場権をかけた増枠予選会を3位で終え、原は「自力」で“レギュラー復帰”を手繰り寄せた。とはいっても全試合に出られるわけではない。それでも「枠も少ないし、(予選会が)始まる前は“宝くじ”を当てるくらいの気持ちでした」という厳しい戦いをくぐり抜けたことには大きな価値がある。
ここ2シーズンは、2017年に失ったシード選手の肩書を取り戻すため戦ってきた。しかし19年シーズンも賞金ランク63位に終わり、同ランク上位50位までの選手に与えられる翌年のフル出場権を得ることはできなかった。さらに年末のQTは73位という結果に。この順位の選手の主戦場は、下部のステップ・アップ・ツアーとなる。「ステップには出ません」。当初は、こんな“意思”も口にしていた。
これまでとは立場が異なるシーズンに臨むことになった原だったが、そんななか突如として新型のウィルスが世界中で猛威をふるった。本来の開幕時期だった3月から、大会中止がドミノ倒しのように続く。予想もしない形で、試合そのものが無くなった。
この時過ごした自粛期間を、原は「引退の疑似体験」と表現する。「引退したらこんな感じで生活するのかなと。(ゴルフを)やりたくてもやれない時があったけれど、すごくリフレッシュできました」というのがその理由だ。「料理もしましたよ、意外にも(笑)」という時間のなか、「誰かが頑張ってる時間に休むのがすごく嫌。でもこの時は何かに追われながら休むということはなかったので、気持ちが楽でしたね」と心身が“整った”。
さらに、その生活のなかでこんな心境の変化も訪れた。「やるべきことは、目標、目的をもって毎日を過ごすこと。それしかできない」。その“目標・目的”の1つが「緊張感があるなかでスイングを直す」ことだった。これを達成するためには試合に出るしかない。ツアーが再開された後、積極的にステップに出場する原の姿があった。これが08年のプロ転向から初めてとなる下部ツアー参戦だった。
レギュラーツアーには、9月の「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」まで4試合に出場。今季開幕戦となった6月の「アース・モンダミンカップ」で44位タイになったが、ほかの3試合は予選落ちを喫した。だが選手権後に行われ、ステップ初出場となった「ユピテル・静岡新聞SBSレディース」では、最後に敗れたもののプレーオフまで進み優勝争いを繰り広げた。
「最後の1カ月間は思いっきりプレーできました」。この話を聞いた時は、まだ増枠予選会を受ける前だったが、明るい表情から出てくる言葉の節々に21年への手応えを感じさせた。ここからは来年の第1回リランキングを突破し、その後の出場権を確定させることをまずは目指していく。「レギュラーで活躍できるように準備したいですね」。もちろん一番強く頭に描いているのは、2015年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」以来となるツアー3勝目を挙げる自分の姿だ。
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