<全国高等学校ゴルフ選手権特別大会 最終日◇18日◇COCOPA RESORT CLUB 三重白山GC(中学)・白山ヴィレッジGC(高校)>
別名“緑の甲子園”と呼ばれる「全国高等学校ゴルフ選手権大会」。例年8月に開催されている高校生による頂上決戦だが、今年は新型コロナウイルスの影響で無念の中止。その“特別大会”が12月17日より2日間の日程で行われたが、超難コンディションに選手たちは苦しめられた。
17日が最低気温1.9度、18日は3.1度と今年最大の寒気に加えて、強風により体感気温はさらに下がった。例年通りであればアンダーパーが出る大会も、オーバーパーが続出。その中でも最終日に伸ばした日本ウェルネス高校(男子・茨城県)がトータル13オーバー、埼玉栄高校(女子・埼玉県)がトータル15オーバーで栄冠を勝ち取った。
昨年の優勝スコアが男子でトータル17アンダー、女子がトータル18アンダーだったことを考えると、難易度の違いは歴然だ。舞台となったCOCOPA RESORT CLUB 白山ヴィレッジGCの総支配人である東本裕治氏は、「過去に(全国高等学校ゴルフ選手権を)開催した際と違うのは、風の向きですね。強さも5メートル以上吹くので、気象条件が厳しい」と、時季的な要素も難しさを際立てたと話す。
さらに、従来の4人中3人のスコアで競う形式ではなく、今回は一日3人が出場し、そのスコアすべてが反映される形に変更。日本高等学校・中学校ゴルフ連盟理事長の井上尚彦氏は、「チームのことを考えてプレーできるか。コースを見た中で、『グリーンは必ず真ん中を狙おう』と考えられるか。チームとしての違いはありましたね」と、個々のマネジメントだけでなく、“チームマネジメント”が勝負のカギを握ったと話した。
女子団体がラウンドしたクイーンコースのピンポジションは、昨年の「日本女子オープン」決勝ラウンドと同じもの。気象条件だけでなく、コースセッティングもハードだったが、それには東本氏の“親心”があった。
「ラフの長さは女子オープンは10センチほどに比べて、今回は4センチ、5センチ程度(で易しい)。グリーンも女子オープンのように、同じところから同じように打てば、10球中10球入るセッティング。いいショットにはいい結果が、悪いショットには悪い結果が出るようなセッティングを心がけました。『(難しいのは)うちだけじゃない。将来プロになるためには考えてゴルフしてほしい』。考えている選手はいいスコアが出たと思います」(東本氏)
普段は回れない貴重なセッティングを経験させたい。そして、将来への礎となってほしいと、あえて難セッティングにした理由を明かす。そして、アマチュアを思う気持ちは井上氏も同様だ。
「みんなが社会人になって、父親、母親になって、(自分の子どもに)『昔甲子園に出たんだよ』と。プロにならなくても、そういった思い出になってくれれば」(井上氏)
新型コロナウイルスの影響で、ジュニアの大会も次々に中止。その中で12月に実現した異例の夢舞台。高校生たちはプレーができる喜びとともに、2日間のし烈な戦いに興じた。ホールアウト後、深々とコースに頭を下げる選手たちの姿が印象的だった。
来年、進学やプロ入りなどそれぞれの道を歩む3年生たちにとって、今回の経験が将来に生きることは間違いない。そして1、2年生にとってもこれを糧に、一回りも二回りも大きくなってまたこの大会に挑むはずだ。“極寒の甲子園”が将来のスター候補生たちに与えた影響は、想像以上に大きいかもしれない。(文・牧野名雄)
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