■並み居る有名プロにも襲いかかる“悪魔”とは…
4月の「東建ホームメイトカップ」からのツアー再開に向けて、オフシーズン真っ最中の選手たち。体づくりやスイング改造など、それぞれの課題をこなしてレベルアップを図っていることだろう。
2019年に初優勝を挙げ、すっかり上位争いの常連となった堀川未来夢もそのひとり。今シーズン(2020-21年)は6試合中3試合でトップ10入りし、賞金ランキングも10位と成績も人気も右肩上がり!
…かと思いきや、ある深い悩みを抱えていた。
「こんなこと、本当は言いたくないんですけど……」
プロゴルファー、いや、アスリートなら誰しもトップシークレットにしたいであろう、“あの”苦悩”…。
「実は、イップスが出てしまったんです」
ドライバーやアプローチ、パターまで、その症状や程度は様々だが、なかなか悩みの渦中にいる本人には直接聞きづらい話題でもある。そのため、我々にとっても大半が謎に包まれたままだが、イップスの症状が出ると、どうなってしまうのか。
■1メートル弱のパーパットを2回仕切り直したジャンボ 悩まされたトッププロは数知れず…
よく聞くのが、「練習では出ないのに、試合になると症状が出る」というパターン。
1988年の「日本オープン」で、青木功、中嶋常幸と優勝争いを演じる中、ジャンボ尾崎がウィニングパットを2度仕切り直したのは有名な話。1メートルもないパーパット。「どうやってバックスイングをやるのか、自分でも心配だった」と、顔面蒼白だった。手を離しては息をつき、また握りなおして…と繰り返し、3度目でようやく入れて優勝を決めた。
宮里藍は米ツアー参戦当初、ドライバーをうまくコントロールできない状態に悩まされたが、克服して世界1位に立った。しかし、その後はパターイップスに悩まされ、2010年には平均パット数1位(1・73)に立っていたパターが、2014年には138位(1・88)まで落ち込んだ。
一時はあのタイガー・ウッズ(米国)までその症状の片鱗を見せたこともある『イップス』。選手生命を脅かすこともあるが、いったいどこからが『イップス』と呼ばれるのだろうか?
■そもそもイップスの定義って?
イップスに関する啓発や指導者の育成などに取り組む「日本イップス協会」会長の河野昭典氏に聞いてみると、『今までできていたことが、突然できなくなること』が、イップスの定義だという。
心の葛藤により、筋肉や神経、脳細胞にまで影響を及ぼす心理的な症状で、集中すべき場面で、プレッシャーによる極度の緊張から、無意識に筋肉の硬化を起こし、思い通りのパフォーマンスができない症状をイップスという。
いま行っていることが自分に合っていないというサインでもあり、インプットした知識や情報を、うまくアウトプットできないことで生じる。『もっとうまくなるには』、『もっとこうしたら良くなるのでは』と様々なことを考え、能力の高い選手がかかりやすい症状だ。そして、イップスの大きな壁となるのが、なかなか本人が認めにくいところ。一時的なスランプとは異なり、イップスは受け入れることが克服への第一歩だと河野氏は話す。
そして、「本当は言いたくない…」という気持ちをぐっとこらえ、重い口を開いてくれた堀川。壁に真正面から向き合ってもらい、イップスを乗り越える糸口を探る。
■克服のため、堀川が向かったのは…
河野氏によると、プロゴルファーの症状として多いのがパターイップス。堀川が悩まされているのもまさにパターで、出始めたのは去年からだ。
克服しようと「とにかく経験豊富な先輩に聞く」と、様々なプロにアドバイスを求めて試してきたが、いまだにコレという解決策は見つからず…。
そこで今回、門を叩いたのが横田真一だった。
横田といえば、自身もパター、アプローチのイップスを経験・克服。順天堂大学の大学院に入学し、自律神経とパフォーマンスの関係などについて研究してきた。そんな大先輩から、イップス克服への金言を授かるべく、プロゴルファー同士による“ぶっちゃけ対談”をお届けする。
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