<Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント 最終日◇21日◇鹿児島高牧カントリークラブ(鹿児島)◇6424ヤード・パー72>
強気の一打が優勝を手繰り寄せた。第2ラウンドを終え首位と3打差の4位タイにつけていた小祝さくらが、最終ラウンドに2つ伸ばしトータル10アンダーで逆転優勝。2021年の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」に続く、今季3勝目(通算4勝目)を手にした。
強い風が吹いた最終日。伸ばしあぐねる周囲と同じように、小祝もガマンのゴルフを続けた。前半を終え1バーディ・1ボギーのパープレー。後半も14番までパー行進という展開だった。この時点で、試合は誰が勝つのか分からない団子状態。そして、この混戦から頭一つ抜け出すプレーを見せたのが15番パー4だった。
表示は300ヤードとなっているが、最終日はティが数十ヤード前に出され、「左手前のバンカーまでが220〜230ヤード、ピンまでは240〜250ヤードとキャディさんに言われました」(小祝)と、ワンオンも狙える距離に設定されていた。そこで小祝は腹をくくった。
「距離を聞いた時にドライバーでいこうと思いました。キャディさんは、順位や、完全に風がフォローではないから迷っていたんですけど、3人(トップで)並んでいたので、バーディを獲らないと厳しい。“いこう”と決めました」
風は左から吹き、右には池が待ち構えている状況。そこで握ったドライバーを振り抜いた。だが左を狙ったボールが思ったよりも右へ。「池に入ったかな」という不安もよぎった。しかしかろうじて最悪の事態は回避。セカンドショットで、残り20ヤードのアプローチを58度のウェッジで1メートルに寄せ、バーディを奪った。
「ギリギリのラインをついていたんだなと思った。ラッキーでしたね」。ここでリスクをとったことで、単独1位の座に躍り出るというリターンが返ってきた。すると続く16番も3メートルをねじ込みバーディ。最終18番では2メートルのパーパットを残すピンチも訪れた。「パターにあまり自信がなくて、半分入らない覚悟で打ちました」というこの場面できっちりとパーをセーブし、後続のプレーが終わるのを練習グリーンで待った。
“天然キャラ”、“のほほん”などと形容される小祝が見せた強気。今年は「賞金女王を狙います」と公言するなど、これまでにはなかった姿を見せている。小祝を指導する辻村明志コーチも、「意識がこれまでとは全然違う」とその変貌ぶりには目を見張る。そして「これまでネガティブだったのが、ポジティブな要素を口にする。そして言い切ったら、達成に向けて努力することができる選手です」と、目を細めた。
「ハーフターンの時に強い風が吹いたし、雨も降ってきてキャリーも出ない。手の感覚も無くなって寒かったです」というコンディションも、弱点克服のために練習を積み重ねてきた低い球で攻略した。勝っても、負けても、試合翌日の月曜日にはコーチのもとを訪れ続けてきた練習が、今年3戦2勝と大きな実を結んでいる。
この勝利で賞金1800万円を獲得。今季通算は早くも1億円突破となる1億314万2208円となり、これで賞金ランク1位に浮上した。「まだ3試合目なので意識していない。来週から(申)ジエさんも帰ってくると思う。ここからまた頑張らないと」。改めて賞金女王への意識を聞かれた時は、これまで見せてきた“慎重な”小祝さくらの姿に戻っていた。(文・間宮輝憲)
<ゴルフ情報ALBA.Net>