<オーガスタナショナル女子アマチュア(決勝) 最終日◇3日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇6365ヤード・パー72>
オーガスタ・ナショナルGCの歴史に名を刻む優勝を果たした梶谷翼。2019年に創設され2回目を迎えた「オーガスタナショナル女子アマチュア」は、日本の女子高校生が制覇。大会決勝ラウンドに進んだ30人中最年少の17歳が、並み居る強豪を押しのけて快挙を果たした。
上位勢に一歩リードを許したまま後半に入ったが、14番、15番で連続バーディ。直後、上位勢がバタバタと倒れ始めると2打のリードを持って単独首位に立った。ところが17番で自身がダブルボギー。大混戦に飲み込まれたが、最後はプレーオフに残り、見事に勝利をもぎとった。
梶谷は、渋野日向子を全英制覇に貢献、ジュニアの指導にも定評ある青木翔コーチの指導を仰いでいるが、「本当に負けず嫌いな選手です」と、梶谷の性格を説明する。ダブルボギーを打つ前、単独リーダーに立っていることは「知らなかった」と話した梶谷。「おそらくプレッシャーというよりは単純にミスだったのでしょう」と、青木も17番のダブルボギーはプレッシャーから来たものではないと話す。
梶谷自身もこのダブルボギーについては、「ミスがカバーできなかった。すごく悔しいです」と、難しいピン位置だったとはいえ、パー4での3オン3パットをものすごく悔やんだ。優勝直後、「何があっても楽しもうと思っていた」と涙ながらに振り返ったが、悔しい思いをしたくない理由が1つあった。今回の優勝は、実はリベンジの戦いでもあったと青木は明かす。
「大会前に行われた春の全国(高校ゴルフ大会)で負けて2位だったんです。そのとき、『オーガスタで悔しさを晴らしてきます』と言っていたんです」(青木)
3月24〜26日に行われた「全国高校ゴルフ選手権春季大会」は初日、2日目とトップタイに立ちながら最終日にオーバーパーを打って2位に甘んじた。そのときの惜敗が、世界のトップランカーたちを倒す原動力になったという。
実は梶谷、昨年12月に左足首の靱帯(じんたい)を痛めた。「1カ月くらいクラブを握れなかったんです。だから、正直ここまでできるとは。でも、もちろん一緒に出場した上野菜々子選手もそうですが、優勝を目指すと話していました。そのための練習もしていました」(青木)。将来的に目指す米ツアーで通用する方法をすでに考えており、そのための準備が今回の優勝にもつながった。
「彼女はもともと球をつぶして打っていくタイプ」と、洋芝では結果が出しやすい部分はあった。それでも「球が低い」という梶谷の悩みを解決するために、技術面はもちろん道具面でも改善を図ってきた。昨今は国内外のツアーでも流行りを見せるグリップエンド側に重りを挿入するなど細かな取り組みを施し、「高い球も打てるようになって、スピン量を増やせた」(青木)と、そんな面でも米国仕様に仕上がっていた。
「次へのステップが増えるのがうれしい」と、照れくさそうに優勝会見で話した梶谷。「本人がローリー・マキロイになりたいと言っている。いつアメリカに行ってもいいように準備をしています」と青木。今回の快挙でアマチュアランキングも浮上する見込みで、秋には日本のプロテストも控える。今回の優勝は、世界的なゴルファーへの第一歩となるための、大きな一歩になった。
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