<フジサンケイレディス 初日◇23日◇川奈ホテルゴルフコース 富士コース(静岡県)◇6439ヤード・パー71>
ただいま売り出し中の田辺ひかりが7バーディを奪い、5アンダーの2位発進。悔やまれるのは出だしの2連続ボギーだが、「はじめての川奈ですが、苦手意識があったので、こんなものかなと思って」と意に介さず。終わってみれば後半の「31」もあって、首位と1打差のスタートだ。
「今週は期待していなかったので」という無欲が好スコアを呼び込んだ。バーディはショットでピンに絡めたもの。「グリーンの目があって意識しすぎて、ロングパットは寄せきれなかった」とまだまだ不安は多いが、今週は心のよりどころが同じコース内で“プレー”しているのも気持ちを楽にしている。
そのよりどころとは、師事する佐伯三貴の存在。2019年11月をもってツアーの一線を退いたが、2勝を挙げているこの川奈の地で1年半ぶりのツアー出場。東日本大震災から節目の10年を迎えた東北は、学生時代を過ごした第2の故郷。そんな東北への思いや、弟子たちへの叱咤の意味を込めて臨んだ“復帰戦”で、佐伯は2オーバーの66位タイと出遅れたが、その佐伯からの助言が田辺を救っている。
佐伯は以前、「田辺は自分のミスを許せないタイプ」と話しており、そんな過去の経験から的確なアドバイスを送った。内容は『落ち着いてプレーするように』。田辺自身は出だしのつまずきに「イライラしちゃったんですけど(笑)、すぐ切り替えることができました」と、連続ボギーから立ち直ることができた。
師匠の言葉を胸に刻み、残り16ホールで7アンダー。見事なカムバックでスタートダッシュに成功した田辺。「練習ラウンドも一緒にさせてもらって、同じ舞台で戦えるのはうれしい。三貴さんが会場にいるというだけで心強いし、ありがたい」。師匠を上回るスコアでアドバイスと叱咤に応えた。
「優勝したいという気持ちは強いんですけど、まだ不安要素はたくさんあります」と、初優勝への道はまだ険しいことは自覚。そんな弱気を打ち消すのも師匠の存在だ。佐伯自身は久しぶりの声援を受けたこの日を終えて、「3日間やりたいという気持ちが増えました」と、こちらは気合十分。最終日の日曜日、弟子が築くVロードに佐伯の姿はあるのか。2日目も二人の動向は追ったほうがよさそうだ。(文・高桑均)
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