<フジサンケイレディス 最終日◇25日◇川奈ホテルゴルフコース 富士コース(静岡県)◇6439ヤード・パー71>
今年に入って無類の強さを誇る稲見萌寧。「フジサンケイレディスクラシック」でも、ただ一人3日間60台を並べ逆転優勝。これで2020-21年シーズン5勝目。21年に入ってからは8戦4勝と、その勢いはとどまることを知らない。
稲見といえばショットメーカー。コーチによると、絶対音感ならぬ絶対距離感があるといいい、ルーキーシーズンとなった19年は、パーオン率で歴代史上最高値の78.2079%を記録し1位。ところが今季は73.8230%。数字だけを見ると5ポイント近く落ちているが、順位は2位。春先は気まぐれな風に苦しむ選手が多い中で、依然グリーンを狙うアイアンショットの精度は健在ということだ。
そんなショット力を武器に優勝した「明治安田生命レディス」、「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」、「ヤマハレディースオープン葛城」はいずれもスコアが出にくいコース。つまり難コースが多い春先でも、しっかりと結果を残していることになる。
4月に入ってから3勝を挙げているが、得意のアイアンショットのほかに、小技の劇的な向上にも成功している。今季のスタッツを見ると、目を見張るのがパーオンホールでの平均パット数。なんと43位(19位)から7位(20-21年)にジャンプアップ。パーオン率が高い上にパットが入れば、強いのは当たり前だ。
右手が左手の上にくるクロスハンドグリップでパットを行う稲見。昨年までの不振を解消するために、ことしから右ワキをこぶし1コぶん開けるようにして劇的に改善した。これにより転がりがよくなり、どんなグリーンでもミスパットを減らすことで、スコアをつくっている。
さらに改善したのは、リカバリー率。先を見据えて、バンスをうまく使った打ち方をコーチと取り組んでいるなか、63.8158%(19年)から71.5827%(20-21年)、順位で見れば14位から1位に浮上している。グリーンに乗ればバーディ、外してもパーセーブという基本がすべて整っていれば、この無敵状態はしばらく続くとみてもよさそうだ。
「風も強いし嫌い(笑)」という春先でこれだけの結果を出した稲見。スコアが出にくい大会でアンダーパーをマークしてきた稲見。これからの季節、暖かくなりグリーンも止まる時季に入るが、今の状態をキープすれば、21年だけで不動裕理の持つ年間10勝の最多記録更新も夢ではない。(文・高桑均)
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