力のある男性なら、ドライバーで女子プロよりも飛ぶ人はいるかもしれない。しかし、地面の上にあるボールを、アイアンでしっかりスピンをかけながらキャリーを出すのは至難の業だ。賞金ランクトップを走る小祝さくらは、“スイングマシーン”と呼ばれる精度の高いアイアンショットでバーディチャンスを量産してきた。そんな小祝が、ゴルフ雑誌ALBAの取材に応じ、しっかり球を押し込めるインパクトについて話している。
弾道計測器『トラックマン』で小祝の7番アイアンのデータを見てみると、入射角は4度のダウンブロー、スピン量は6817回転、キャリーは150.9ヤードとなっている。一般的に入射角は2〜5度、スピン量は番手×1000回転(7番なので7000回転)が理想といわれる。小祝はほぼ理想的なアイアンショットを打っていると言っていい。
小祝がアイアンショットで意識していることは、「極端に上から打ち込まないこと」だという。
「緩やかなダウンブローでヘッドを入れて、最下点の手前でボールをとらえると、強く球を押し込めます。インパクトでは手元が先行するハンドファーストの形でロフトを立てると、スピンがかかってボールが上がるんです」
アイアンではダウンブローにヘッドを入れるのが鉄則。かといって打ち込みすぎると、ボールを強く押し込むことはできない。実際に小祝のアイアンショットのターフ跡を見てみると、薄く長く芝が削れていることがわかる。これこそが精度の高いアイアンショットが打てた証拠。上から打ち込みすぎると、左向きの短いターフ跡となる。
一般ゴルファーにおいては、上から打ち込みすぎる人よりもクラブが下から入ってロフトが寝てしまう人が多いだろう。いわゆる“すくい打ち”のミスで、ダフリも出やすい。うまく当たっても、スピンの少ない弱々しい球になるため、特に風がアゲインストのときは、まったく距離が出ない。小祝はしっかり球を押し込むために、左手の甲の向きを意識しているという。
「インパクトで気を付けているのは、左手甲が上を向かないこと。上を向いてしまうとダフりやすくなるし、球がつかまらないからです。イメージとしては、左手甲を背面に向けて振り抜く感じ。そうするとロフトが立ったインパクトになります」
ポイントは左ワキを締めて、左手リードでスイングすることだ。「上体と両腕が一体化して振れるので、左手甲を背面に向けて振りやすくなります」と小祝は教えてくれた。それでも球を押し込めない人は、短く握るといい。「指2、3本分短く持つと、両ワキを締めてボールに近く立てるので、体で押し込みやすくなります」。
今年の国内女子ツアーは8試合を終えて、小祝が2勝で稲見萌寧が4勝と、ほぼどちらかが勝つ状況が続いている。どちらもアイアンの名手でツアー屈指の精度を誇る。女子プロたちの魅せるドライバーも気になるが、勝てるアイアンにも注目したい。
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