<中日クラウンズ 最終日◇2日◇名古屋ゴルフ倶楽部 和合コース(愛知県)◇6557ヤード・パー70>
大混戦で迎えた最終日、話題のひとつになったのが宮本勝昌、片山晋呉の優勝争いだ。第2ラウンドを終えて、首位タイの5人の中に名前を並べた2人。予選ラウンドから合わせて3日間を同じ組でプレーした。
水城高校、日大の同期で、プロ転向年も同じ。2人の付き合いは高校時代から数えただけで33年。筆者の場合、一番長い付き合いでもせいぜい十数年…。比較するのもおこがましいけれど、30年以上の旧知の仲とはなかなか想像がつかない。そんな2人が最終日に同じスコアから、しかも同組で優勝争い。決戦直前の様子が気になって、スタートまでの練習を見に行ってみた。
スタート時間は、最終組1つ前の9時30分。2人がクラブハウス前に現れたのは、8時30分少し前だった。宮本はバッグからスティックとクラブ3本を抜いてひとりショット練習場へ。その数分後に、片山が江連忠キャディとやってきた。2人のあいだは3打席ぶん。ハウスキャディと必要な会話だけを交わし、黙々と休みなく打ち続ける宮本。一方の片山は、隣の選手との談笑を交えつつショット練習をはじめた。
宮本がアプローチ練習場に移動したのが8時50分。バンカーショットを数分行ったところで、ショットを終えた片山が登場。このとき、アプローチ練習場には2人だけ。なにか面白いやりとりが聞けるかも…と聞き耳を立てていたが、筆者が見ている限り、ドライビングレンジに入ってからスタート1番ティに立つまで、言葉を交わすことはなかった。
前日には「バチバチにはならないよ」(片山)と言いつつ、やっぱり長年のライバルならではのピリピリ感があるんだろうなあ…。そんな邪推は、ホールアウト後には消し飛んでいた。
「(宮本の存在は)刺激というか、ずっと一緒なんだよね」というのは、ラウンドを終えた片山。アマチュア時代から同世代のトップを走ってきた2人。当人たちには慣れたもので、何度も一緒にこういう緊張感を味わってきたはずだ。その2人が、50歳を前にシード選手として優勝争いを演じている。シニアツアー参戦について語ることも増えてきたが、レギュラー引退とはまた違う。
「心残りは世界一になれなかったこと。シニアで海外メジャーで優勝したい」と、新しいことをどんどん取り入れて進化し続ける片山。「とにかく試合をやりたいですから。年間35試合くらいプレーしたい」と、実戦数を増やすためにシニア参戦を見据える宮本。ゴルフへの貪欲さという根っこの部分はそっくりなのだ。
とりたてて、スタート前に特別な会話は必要ない。「50歳を前に、2人で和合で優勝争いできるなんて幸せですよ」、「今年は3日間、晋呉とできたのは楽しかったですね」と、肩を並べて3日間戦った2人の言葉に嘘はなかった。
宮本は2位、片山は6位に終わり、1組前の岩田寛が7バーディ・ボギーフリーの「63」で文句なしの逆転。圧倒的なゴルフで6年ぶりの復活優勝で和合を盛り上げたが、もし、もう1日あったなら。思わず、そう考えずにはいられない。(文・谷口愛純)
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