前週、わずか1打に泣いた男が早くもリベンジの気配だ。「ジャパンプレイヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品」初日、高山忠洋がボギーなしの7バーディ「65」で回り、7アンダーで首位タイ発進を決めた。
インから出た高山は11番パー5で2オンを狙った球が奥のカラーへ。カップに入れるためには一度グリーンを出るようなラインだったが、「タップインの距離に寄せようと思い過ぎていた。ある程度のところでいいと思った」と切り替えてパターで打った球が1メートルに。これを沈めてバーディを先行させると、3〜4メートルのパットを確実に決めて、「うまく逃げ道を確保しながらできた」とボギーフリー。リーダーボードの頂点に名を連ねた。
ツアー5勝の実力者ながら、高山はここ数年苦しんでいた。2018年に「眼球の中に水が溜まっている状態で、水の中に顔つけたときの状態」という目の病気『中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症』を患い、ツアーを離脱。リハビリを経て、昨年9月にようやく特別保証制度(シード選手が故障、病気となった際に保証する制度。高山の場合、9試合で約840万円加算できればシード復帰できる)で復帰したが、12位に入った「フジサンケイクラシック」以外は予選落ちだった。
それが、21年は見違えるような活躍だ。「東建ホームメイトカップ」で27位タイに入ると予選落ちの後、前週の「中日クラウンズ」では最後まで優勝争い。最後「入れたら(シード復帰)間違いないだろうな」という4メートルのバーディパットは決められず3位となり、残り2試合で約83万円が必要な状態で今大会に入ってきた。
当然、数字は分かっている。けれども、そこは意識しない。「計算し始めたら自分のゴルフがダメになる。やってダメなら仕方ない。やらないと悔いが残る」。さらにレジェンドからの言葉も支えになっている。
「水曜日にたまたまロッカーで会って挨拶に行ったら、“勝ちに行くくらいでいけ”と言われました。それを聞いて、出るからには計算じゃなくベストを尽くして優勝目指して頑張ろうと思いました」と、青木功からの言葉が心にしみた。
その気持ちを胸に挑んだ第一ラウンドで最高のスタート。「先週から状態がいいと思ってやっています。いい勘違いをして(笑)。そうしないとやっていられないですから」と口も滑らかな43歳。「コースと自分への挑戦をテーマに、体力と相談しながら賢く回りたい」と今週こそ勝ってシードを決める。(文・秋田義和)
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