松山英樹が日本勢として初めて制した「マスターズ」は全世界が注目する戦いだ。だからこそ、マスターズ発信でトレンドが生まれることも少なくない。ジョーダン・スピース(米国)のパターグリップ『スーパーストローク』、セルヒオ・ガルシア(スペイン)が優勝したときに使っていたパター『スパイダー』。世界最高峰の舞台で活躍した選手のアイテムはトレンドとして全世界に広がっていく。
そんななか、今年注目を集めそうなのが、松山英樹に次ぐ2位に入ったウィル・ザラトリス(米国)も使うアームロック式パターだ。比嘉一貴が佐藤太地の影響で関西オープンから使用し始めており、テーラーメイドのレップとして選手をサポートしている真野義英氏は「次はこれが来ると思います」と太鼓判を押す。
「アームロック式は支点がブレないですし、スピード感もヒジと連動している分、コントロールしやすい。短いものよりもストロークが安定しますよね。アマチュアの方は特に効果を実感しやすいと思います。ヘッドをピンタイプからマレットにする以上に大きな変化がありますから」
また、アームロック式がツアーで増えている理由として別の理由も挙げてくれた。
「今年のマスターズに出場した選手の60%が順手ではない握り方でパッティングしています。こんなことは今までなかった。それだけパッティングというものに関する考え方が変わってきているのだと思います。昔は変わった持ち方というのは“パターで悩んでいる人”というイメージだったのが、ザラトリスはもちろん、ブライソン・デシャンボーやウェブ・シンプソンなどうまい人が使うものという認識になってきている。特に若い選手にはそのあたりの抵抗はないですから、日本ツアーでも誰かが起爆剤となれば一気に流行ると思います」
そのテーラーメイドのアームロック式を昨年12月から使う、池村寛世はこう語っている。
「上から構えられて、つかまえられる感覚がある。スライスラインもつかまえられて良い。当分これでよさそうだなって感覚がある。重量を変えてみて、速い、遅いグリーン用に2、3本あってもいいかなと考えながら回っていました」
また、オデッセイの中島申隆氏に話を聞いても同じように増殖傾向にあるという。「合う選手は合いますし、合わない選手はハッキリしていますね」と前置きしたうえで、「傾向的には手を使い過ぎてしまう選手がそれを抑えてインパクトを安定させる、という傾向があります。比嘉選手も悩んでいるわけではなくて、よりショートパットが入るものを探していてマッチしたという感じですね」と話す。
オデッセイのアームロック式パターは10本以上の作成依頼があったという。その中には賞金王・今平周吾の名前もある。
「今平選手の場合は“テストしたいんです”ということが多い。エースパターがあってその信頼は高いのでスイッチする感じではないですが、ストロークが悪いときに使う事があるかもしれません。いずれ出てくるのではないでしょうか」
アームロック式の流行りは2年前から兆候があったというが、ブレードタイプのアームロックの流行はここ最近だという。「PGAの選手が使って入ってきて、さらに比嘉選手が使って結果が出たことでザワついている感じがありますね。そこから上井邦裕選手だったり、貞方章男選手だったり、塚田陽亮選手だったり。けっこうな数を作りました」とトレンドの流れができているという。「みんなすぐ使うというよりは、新しい形でちょっと違うことを取り入れたいタイミングなのかなという気はします」。
我々アマチュアも早速気になるところだが、そういった方に中島氏からオススメするのはアームロック用のヘッドだ。
「左手に固定するためにシャフトが左から斜めにくるからロフトが立つ。いわゆるハンドファーストですね。そうなったときに、普通のパターだとロフトが立ちすぎてコロがりが悪くなることが多いと思います。その分、アームロック用のヘッドはそれ用のロフトに設計されていますから、そのまま使いやすいと思います。一般の方にはすごくお勧めですね。アマチュアの方も“パターが入らない”というときの一つの選択肢として面白いと思います」
今年も出てきた「マスターズ」からの新たなトレンド。比嘉、池村の他にも「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」で1打差2位タイに入った植竹勇太もテストしており、「ショートパットがいい感じに打てている」と好感触を得ている。同大会では坂本雄介やデービッド・ブランスドン(オーストラリア)といった選手がすでに投入していた。チャンピオンが生まれた日本でも新たな潮流が生まれるのか。今後も注目していきたい。
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