今年から4日間大会となった「リゾートトラストレディス」は勝みなみの優勝で幕を閉じた。ジャック・ニクラス設計のセントクリークゴルフクラブで2年ぶりの勝利を挙げることができたのか。上田桃子や小祝さくらのコーチを務める辻村明志氏が解説する。
■ニクラス×塩谷育代が生み出す戦略性 メジャーでもいいくらい
1999年以来の開催となったセントクリークGCは、アップダウンがあり、池やバンカーが多数絡み、面積が大きくアンジュレーションの多いグリーンの戦略性に富むコース。そこに塩谷育代がセッティングを施した結果、辻村氏が「メジャーを開催してもいいくらい。選手たちもやりがいがあったと思います」というコースが出来上がった。
「フェアウェイは広めですが、2打目からのマネジメントが非常に求められるコース。グリーンにアンジュレーションがあるからピンポジションによって求められることが大きく変わります。ショットは面に乗せなければだめ、さらにロングパットも残り、のぼり、くだり、尾根と簡単にはバーディ、パーを獲らせてくれません。池が絡むホールではミスショットに対してのペナルティもしっかりとあった。すごくいいピンポジションでしたね。予選は雨もあってグリーンもそこまででしたが、最終日は風もありグリーンも仕上がっていてコンパクションがあり、かなり難しいコンディションでした」
■勝みなみは力感が抜けた 巧みなパッティングのここがすごい
上位で最終日を迎えた何人もの選手が大きく落とす、難コンディションでの戦いを制したのは勝。アマチュア時代に優勝するほどの実力者が、ここ2年間優勝から遠ざかっていた。そんな勝の変化を辻村氏は「力感」に感じた。
「今大会では飛距離の出る、すごくいいドローを打っていました。調子が上がらなかった時期は飛ばそうとしてなのか力みが強く出ていたように感じました。スイング的には悪いとは思いませんでした。それが今週は“外からゆっくり回すイメージ”でやったと聞きましたが、振れていて飛んでいるのにアドレスからフィニッシュまでテンションが変わらない。すごくバランスが良かった。そこが大きく変わったと思います」
もちろん、昨年から取り組んだトレーニングの効果も見逃せない。「マッスルバックのアイアンでしっかり球を上げるには男子並みのパワーがいる。勝さんは広背筋、体幹が強い。だから上に舞い上がっていく球が打てる。そこにもポテンシャルを感じます」。アイアンは同じスリクソン契約の松山英樹と同じもの。また、今大会で4番アイアンを入れていたことも見逃せない。
そのショットに加えて4日間の平均パット数は25.50。全選手で2番目となる数字だ。「勝さんのパッティング技術はピカイチ。ライ角がしっかりと座るいちにパターのヘッドを置き、スクエアに構えてミスヒットしない。だから出球は正確だし、ラインに乗る。選ぶパターを見ても顔や座りを大事にしているのが伝わってくる」。今季の平均パットは1ラウンドあたりが1位(28.3333)、パーオンホールが2位(1.7676)。この長所にショットがついてきた形だ。
構えにアマチュアが参考にしてほしいポイントがあるという。「勝さんは人よりもアップライトに構えて、少しつるようなかたちで持っています。だからヘッドの重さを感じた振り子のようなリズムで打てます。これが一定だからスピード感をつかみやすいし、タッチが合う」。一方でアマチュアはどうか。「多くのアマチュアの方はハンドダウンしすぎてライ角がうまく座れていません。パターにはライ角が4度ある。下がり過ぎればヘッドは左を向きます。座りが良くなれば、自然と芯が打ちたい方向に向きますよ」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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