「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」の練習日。幡地隆寛のパッティングが何かおかしい。その違和感の正体はパターの短さにあった。身長188センチの幡地はそれまで35.25インチと少し長めのパターを使っていたが、練習日には32インチの短いパターに中尺用の長いグリップを挿して使っていたのだ。
27歳の幡地がツアーにフル参戦を始めたのは2019年シーズン。平均飛距離で315.3ヤードを記録して、2位になったワールドクラスの飛ばし屋だ。今シーズンの平均飛距離はここまで311.5ヤードで1位となっている。課題のショートゲームを重点的に練習してきたが、今シーズンは日本ゴルフツアー選手権が始まるまで7試合に出場して予選落ちが4回。4月に行われた「東建ホームメイトカップ」の21位が最高成績で、なかなか結果が出せていなかった。
日本ゴルフツアー選手権では普段から仲のいいJ・チョイ(米国)に「35インチにこだわらないほうがいいんじゃないか」と言われて、35インチのパターを32インチに切って、チョイとともに練習ラウンドを行った。32インチのパターに中尺用の長いグリップを入れると、パターの半分がグリップのようで、体の大きい幡地が持つと、より短く見える。
幡地が短いパターを使う意図とは? 「ボールに近ければ近いほど、すごくラインが見やすいし、短いので振りやすい。ブレがほとんどない。背が低い人がパッティングに迷いなく打っている感じってそういうことなのかなと」と今までにない発見があった。
大事な国内メジャー大会で思い切ったチェンジを行ったのは「良いパッティングをしているのに、何で入らないんだろう? 昔に比べたら今はすごく良いパッティングができているのに、結果がついていかない」という思いがあった。そこで「短いパターで足りないものを何かを掴めれば」とついに決断したのだ。
ところが、試合が始まるとエースの35.25インチとも、練習日に使っていた32インチもとも違うパターを握る幡地の姿があった。「(開幕前日の)水曜日の夕方から34インチのパターを32インチに短く握って使っています。ちょっとずつ長くしていきながらまた元に戻れれば。最終日に35.25インチに戻すための練習です」。
幡地の言葉通り、最終日はエースの35.25インチに戻して、出だしの3連続を含め8バーディを量産。この日のベストスコアとなる「65」を出して今季最高となる単独5位に入り、賞金720万円を獲得。賞金ランキングは38位にジャンプアップした。
ラウンド後、幡地は「初日からきのうまで毎日パターを替えていました。練習ラウンドは32インチのパターで回って、予選ラウンドは34インチを短く握り、ヒールを浮かせて自分の一番いい転がりの出る構えを見つけた。ちょっと勝負所のタッチが合わなかったので、3日目が終わってからエースパターで調整して、きょうはラインを読み切れたら絶対に入るというパットが打てた」と振り返る。
今週はきょう開幕した下部のAbemaTVツアー「LANDIC CHALLENGE 8」に出場する幡地が、どんなプレーを見せてくれるのか注目したい。
<ゴルフ情報ALBA.Net>