<資生堂 レディスオープン 最終日◇4日◇戸塚CC(神奈川県)◇6570ヤード・パー72>
約1年半の苦しい時期を乗り越えてツアー通算17勝目を手にした鈴木愛。2019年に7度も勝った賞金女王はこれまで何度も行ってきた優勝スピーチでこれまでの苦悩を思い出し、何度も涙をすすった。
そんな鈴木が「彼女だったからこそ」と勝因の1つとして挙げたのが、今週バッグを担いだ飛田愛理(とびた・えり)キャディ。「中学生のときからの仲良しの友達」は鈴木のネガティブな部分を消し去った。
「これまでは帯同キャディさんにお願いしていたのですが、どうしても風などに神経質になりすぎてしまっていました。でも、今週は友達だからこそ、シンプルに考えて無駄なくできたと思います。帯同キャディさんが悪いというわけではなく、今週はそこが大きかった」
楽しくできたことも良い方向に導いた。「彼女もプロテストを受けていて“なかなかお互いうまくいかないね”って自分たちの苦労話をしたり、昔話をして盛り上がったり。彼女はちょっと天然なところもあって、話しているだけでテンションが上がる」。久々に会った友人との会話は、本来不必要だった余計な情報を消し去った。さらに「今の良かったよ」や「ナイスショット」と毎回声をかけてくれ、鈴木の精神面を支えてくれた。
その真骨頂が14番のボギーの後だった。今大会初めてのボギーによって、単独首位から首位タイに並ばれた。鈴木自身は「いつかはくると思っていた」と冷静に受け止めたが、「声をかけてほしくない」タイミングでもあった。それを察したのか、飛田さんは何も言わない。「見守ってくれたのが、すごくありがたかった。すごく息の合ったプレーだったと思います」。その気遣いもあって気持ちを切らすことなく、優勝を決める16番のイーグルへとつなげた。
久々の表彰式。苦難を乗り越えてつかんだトロフィを満面の笑みで持つ鈴木の隣には、見守るように微笑む勝利の女神の姿があった。(文・秋田義和)
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