<GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップ 初日◇16日◇イーグルポイントゴルフクラブ(茨城県) ◇6657ヤード・パー72>
前週の「ニッポンハムレディス」でプレーオフまで進みながら、惜しくも堀琴音に敗れた若林舞衣子が圧巻のゴルフを見せた。
スタート1番ホールでおはようバーディを獲得するや、3番、4番でもスコアを伸ばし、そして6番から10番まで5連続バーディ。その後は14番でも重ねる9バーディのラッシュだった。9アンダーでボギーなし。ホールアウトした時点でトップに立ってフィニッシュした。これだけバーディラッシュのスコアを見ると、さぞや鬼気迫るラウンドだったのではないかと思うが、若林の表情は終始軽やかで颯爽としていた。
2021年に出場した17試合で、トップ10フィニッシュは前週のみで、予選落ちも6回。何が若林を強くしたのだろうか。それは大きく成長した人間力と思えてならない。
ニッポンハムレディス後、プレーオフに負けた後のインタビューでは、「最後まで攻めの姿勢を崩さなかった堀さんが素晴らしいプレーをした結果です」と讃え、勝者を羨む(うらやむ)姿はなかった。また常々口にしているのが、家族の協力に対する感謝の言葉だ。
若林は2016年に結婚し、18年11月から産休制度を利用してツアーを離れ、19年に長男を出産。コロナ禍で開幕が6月にずれ込んだ2020-21年シーズンから復帰しているが、「産後復帰するために家族全員が協力をしてくれた。練習やトレーニングに専念できたのは、息子を快く預かってくれる父母や姉、姉の家族がいたからできたこと」と感謝の言葉を自信のインスタグラムでも綴っていた。
だが、先月29日に悲しいできごとがあった。それは「アース・モンダミンカップ」の最終日だった。スタート前に姉から母が危篤との連絡があり、亡くなったことをホールアウト後に確認したという。コロナ禍の影響で入院中は面会もできなかった。死に際に「会いに行けなかったことを後悔しています。自分のゴルフだけは後悔しないように、自分を信じてプレーしようと決めていました。それで結果がついてくればいい」と、ホールアウト後に涙をこらえながら話した。月並みな言葉だが、天国の母がやさしく見守っていてくれたのだろう。母と二人でプレーしていたのに違いない。
ゴルフはメンタルが大きく影響するスポーツだ。ミスに怒りを持てば余計なリキミが生じ、バーディの連続に浮かれてしまえば緩みが出る。「今日は目の前に一打に集中できた」という若林の大きく成長した人間力は、自身を信じるプレーにつながっている。変化の後に進化あり。若林を取り巻く環境の変化が、大きな進化を生んだに違いない。明日からの2日間、若林のラウンドから目が離せない。(文・河合昌浩)
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