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ライダーカップ、いかにして米国圧勝は達成された!? 【舩越園子コラム】

2年に1度の米欧対抗戦「ライダーカップ」は「19対9」で米国チームの圧勝に終わった。
初日から「6対2」と米国チームの大量リードで始まり、2日目を終えて「11対5」と欧州チームとの差をさらに広げた。個人マッチが行なわれた最終日は、米国チームが勝利に求められる14.5ポイントを先取し、欧州に渡っていた優勝カップを奪還した。
戦いの舞台となったウィスリングストレイツ(米ウィスコンシン州)には、大観衆が大声でゆっくりと「U〜S〜A〜」を唱和する歓喜の唸りが鳴り響き、米国キャプテンのスティーブ・ストリッカーの目からは歓喜の涙が溢れ出した。
振り返れば、開幕前は米国チームの輪を危惧し、勝利を疑問視する声があちらこちらで聞かれていた。3週間前のツアー選手権で手首を痛めたブルックス・ケプカは、果たしてライダーカップで戦えるのかどうか。
そのケプカとブライソン・デシャンボーの数年来の不仲はヒートアップの一途を辿っているが、そんな2人が同じ舟に乗ったら、米国チームの輪は乱れてしまうのではないか。
12名のチームメンバーの半数がライダーカップ初出場者で占められる米国チームは、ルーキーがわずか3名でベテラン揃いの欧州チームに圧倒されてしまうのではないか。
しかし、蓋を開けてみれば、初日から米国チームが記録的な大量リードを奪い、3日間を終えて10ポイント差の圧勝は、対戦チームが「オール英国」から「オール欧州」に拡大された1979年以来、史上最大差の歴史的勝利となった。
そもそも「オール欧州」となってからは、欧州チームの圧倒的な強さが光り、2000年代だけを見ても、欧州7勝に対して米国2勝と差を付けられていた。そして今回は、前述した通り、米国側のさまざまな問題点が取り沙汰されていたのだが、そんな中で、一体なぜ米国チームは圧勝することができたのか。
米メディアの中には、欧州チームのキャプテン、パドレイグ・ハリントンがキャプテン推薦の枠を従来の4人から3人へ減らしたことや実際に選んだ3人(S・ガルシア、I・ポールター、S・ローリー)の人選、そして3日間の采配に「問題があった」「失敗だった」などと、ハリントンの責任を指摘する向きがある。
今回は開催地が米国だったこと、コロナ禍で欧州ファンの渡米が難しく、欧州チームは極端なアウェイ状態の中でのプレーになったことが彼らの敗因だと見ることもできる。
しかし、欧州チームの敗因が、そのまま米国チームの圧勝を導き出したわけではないはずである。欧州キャプテンのハリントンは「我がチームは100%の力で戦ったが、米国チームがそれを大きく上回る素晴らしいプレーをしたということ。打ち負かすことは困難だった」と憔悴しきった表情で完敗を認めた。
それならば、なぜ米国チームは、それほど素晴らしいパフォーマンスを披露することができたのか。
米国キャプテンのストリッカーいわく「開幕前の万端な準備がモノを言った。2週間前、全員が集まり、コースの下見と合同練習をして、団結を誓った」。開幕前にさまざまな問題が浮上していたからこそ、逆にチーム全員が「マッチに勝つこと、ポイントを獲ることに集中しようと務めた」とは、ジャスティン・トーマスの言。チームが揺らぎそうになっていたからこそ、誰もが一心不乱のプレーを心がけ、それが結果的に強い団結と最高のパフォーマンスにつながった。
平均年齢は米国チームが29.1歳、欧州チームが34.6歳。平均世界ランキングは米国が8.9、欧州が30.8位。コリン・モリカワをはじめとする米国チームのヤングエリートたちを支えていたのは、キャプテンのストリッカーや副キャプテンのフィル・ミケルソンらのベテラン勢。そして、初日から激励とアドバイスをテキストメールで送っていたタイガー・ウッズだった。
「タイガーの姿はここにはなくても、彼のスピリッツは常にチームとともにあった。タイガーの存在と激励は、とても大きかった」そう語ったキャプテン、ストリッカーの存在は、さらに大きかったのではないだろうか。
開幕前のゴタゴタを逆手に取り、若き精鋭もベテランもレジェンドも、全員が一致団結し、ピンチをチャンスに変えた米国チームが歴史を塗り替えた圧勝。
「これは、米国ゴルフの新時代の幕開けだ」
ストリッカーの言葉に米国中が頷き、沸き返ったサンデー・アフタヌーンだった。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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