先週12日(土)、尾崎将司は自身が主宰する「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」のセレクションを公開し、記者らの取材に応じた。そこで尾崎は今シーズンのツアー出場に意欲をみせる一方で、いまの男子ゴルフ界を嘆く言葉を口にした。
原英莉花、西郷真央、笹生優花を指導しトッププレーヤーに育てあげた尾崎は、女子ゴルフについて「昔と今では全然レベルが違う」と感じている。「なぜ高くなったかというと、子供のころから目立つ度合いが以前とはまったく違うから。これだけ稼げて、脚光を浴びて、試合数も多い」と女子ゴルファーを取り巻く環境の変化がその要因と説く。
2022年の国内女子ツアー初戦は、3月3日に沖縄で開幕する「ダイキンオーキッドレディス」。以降7月7日に北海道で開催の「ニッポンハムレディス」まで19週連続でツアーが行われ、11月の最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで現時点で全38試合が予定されている。その賞金総額は1年での過去最高となる43億1600万円で、21年比9600万円増とその人気と注目度はいまだ右肩上がりだ。
岡本綾子を中心に、小林浩美、ト阿玉といった実力派がツアーを盛り上げた1989年には全39試合が開催されていたが、バブルの崩壊とともに03年には30試合まで落ち込んだ。しかしそこから徐々にその数を増やし、V字回復。現在、米女子ツアーよりもその試合数は多くなっている。
一方男子については「石川遼、松山英樹以降、この2人のような特別なスタートを切った選手がいない。残念ながらあの試合数じゃ…」とジャンボも肩を落とすほど。男子選手の育成についても「なかなか…」と苦い表情をみせた。
男子ツアーはアジアンツアーとの共同主管となる「SMBCシンガポールオープン」がすでに1月に開催されたものの、国内での初戦は女子から4週遅れた3月31日に三重県で行われる「東建ホームメイトカップ」まで待たないといけない。オフウィークも多く挟み、1年間で予定されている試合数は「25」。欧州ツアーとの共催となる「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」や、選手会との共同開催の「For The Players By The Players」と「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」の新規大会が開催されるなど、21年よりトータル1試合増えているが、いまだに女子ツアーに大きく離されたままだ。
男子ツアー優勢が続く海外と比べても、考えられない状況になっている。1970、80、90年代のゴルフ界は青木功、尾崎、中嶋常幸の「AON」と呼ばれる3人が席巻し、一時代を築いた。また米ツアーや欧州ツアーを上回る世界一の賞金総額を誇り、多くの外国人選手が来日し、参戦することも大きな話題となっていた。しかし90年に44試合が行われて以降その試合数は減り、02年には初めて30試合を下回る29試合の開催。その後も増えることはなく、新型コロナ感染症の影響もあり低空飛行を続けている。
現在の日本ツアーの賞金総額の規模は、米ツアーの1/10にも及ばない状況。日本ツアーは米ツアー、欧州ツアーに続く3番手に位置すると言われているが、サウジアラビアなどアジアの台頭により、その称号さえも危うくなってきている。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)の前副会長である石川遼は、18年に就任した際、「今後、試合数が増えることがベストだけど、なぜ減ってしまったのかを選手自身が知ることが大切。僕としては、試合をやってくださいと営業をするのではなく、試合をやりたいといっていただけるようなゴルフ界にしたい」と話していたが、残念ながらいまだに実現には至っていない。
今季から副会長に就任した中西直人も、「昔(1980〜90年代)は賞金もすごかったし、PGAツアーより日本のほうが稼げた時代。それを見てプロに憧れた選手も多かった。今はゴルフで稼げるプロはほとんどいないし、プロゴルファーよりYouTuberになりたい子が多い。ひとつの選択肢にプロゴルファーになりたいな、と思えるような環境を作りたい」と危機感を募らせている。
同じく尾崎も「なんとかしたいという気持ちもないことはないけど、なかなかうまくいかない」とその改革に頭を悩ませる。それでもセレクションでチェックしたジュニアのなかに、「男子でも有望的な選手がいた」とうれしそうに振り返ったのは光明か。松山英樹がマスターズを制し、笹生優花が全米女子オープンで勝利を挙げ、稲見萌寧が東京五輪で銀メダルを取った21年。22年こそ“国内男子選手”の活躍が待たれる。
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