アダム・スコット(オーストラリア)が「マスターズ」を制したのが2013年4月。当時9歳だった少年は、初めて見るゴルフ中継に興奮を抑え切れなかった。雨中のプレーオフを制して初メジャータイトルを手にしたスコットの勇姿は、少年のその後の人生を大きく変えるきっかけとなった。
同年3月、カリフォルニア州シリコンバレー在住のエリック・ユンは、家族とハワイ旅行に出かけた。旅行中にたまたま寄った練習場で初めてゴルフと触れ、その数週間後にマスターズをテレビ観戦。「雨の中あんなパットを決めて、本当にかっこよかったし、あれ以来アダムの大ファンなんだ」と目を輝かす。
4日間の中継はすべてが新鮮に映った。大会最終日、スコットが18番で5メートルのバーディパットを決め、その直後にアンヘル・カブレラ(アルゼンチン)もバーディを決め返しプレーオフに突入。1ホール目でスコットが再びバーディパットを沈め、オーストラリア人として初めてグリーンジャケットに袖を通した。
それ以来、スコットの姿はエリック少年の夢となった。「いつかはアダムのようなプレーヤーになりたい」。めきめきと力をつけ、アダムの背中を追った。17年には、マスターズ週直前の日曜日オーガスタナショナルGCで行われるドライブ・チップ・パット選手権にも出場を果たし、スコット歓喜の地を踏んだ。
残念ながらそのオーガスタでの体験ではスコットに会うことは叶わず。そんなエリックに朗報が飛び込んだ。全米ジュニアゴルフ協会(AJGA)がカリフォルニア州で大会を開くことになり、なんとそのホストがあのスコット。グローバルブランドアンバサダーを務めるユニクロとともにタイトルスポンサーを努める大会を開催、「絶対にアダムに会いたい」と意気込んで参加を決めた。
端正なルックスに優しい語り口、そして米ツアー14勝を誇る強さも兼ね備えたゴルフ界随一のジェントルマンとして知られるスコット。誰もが認める人格者で大スターが大会の最終日にこのジュニア大会を訪れると聞き、エリックの胸は高鳴った。「絶対に出ないと行けないと思ったし、家族もサポートしてくれてここに来ることができた」。
大会初日を終えて首位と3打差の1アンダー・7位タイ。AJGAのインタビューを受けたエリックは、大会の参加賞として受け取ったばかりのユニクロとスコットのダブルネームポロシャツをあわてて着込み、キャップをかぶり、うれしそうに“スコット愛”を話してくれた。
優勝すればスコットから優勝トロフィーを受け取る権利を得る。スコットのクリニック、トークセッションなどが用意された表彰式では、「いろんなことを聞いてみたい」と今から鼓動が早まる。現地時間の日曜日まで「ジェネシス招待」に出場し、月曜日のジュニア大会最終日には、上位選手のスタートコールをスコット自ら行う予定。心の師匠、永遠のアイドルに自分の名前を呼んでもらうためにも、2日目も上位をキープしてみせる。
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