<オーガスタナショナル女子アマチュア(決勝)◇3日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇6310ヤード・パー72>
「75」と3つ落としたラウンドを終えた吉田鈴は、取り囲む報道陣を前に「ダメでした。自分のプレーができなかった」と言った後、言葉を詰まらせ、涙を流した。厳しい予選ラウンドを勝ち抜き、“聖地”オーガスタをプレーできる晴れの舞台。ただその涙は、これが決して“お祭り”ではなく、真剣勝負の場だったことを見る者に伝えた。
予選ラウンドを終えトップとは4打差。難関コースでの戦いがどういう結果をもたらすかは誰にも予想がつかず、本人も「可能性はある」と逆転を信じてスタートした。しかしショットの縦距離と、グリーンのタッチの感覚が合わない。序盤の2番パー5、3番パー4で連続ボギーと、立ち上がりからバタついた。
「試合になるといいショットが打てない。うまくいかないですね。(グリーンは)予選に比べると遅かったけど…。うーん、うまくいかない」。一日を思い返し、こう言葉を振り絞った時も、目からこぼれ落ちたものが乾くことはない。
「緊張するとスイングが止まってしまうから、そこは直さないと」。「アンダーパーで上がることを目標にしていたので、技術的にも足りない」。「海外の選手は打ち分けができるけど、私の球は転がってしまう。それでバックサイドに落ちて、というのが多かった」。本人は反省の言葉を立て続けに並べたが、コースでは輝きも放った。
7番パー4は2打目をピン奥1.5メートルにつけスコアを1つ戻す。さらに14番のパー4ではセカンドショットで傾斜を利用し、1メートルのところまで寄せバーディを奪った。ギャラリーを沸かせたのが、アーメンコーナーの12番パー3だ。神に祈ることなく、自らの意思で放ったティショットがグリーンをヒットすると大拍手を浴びた。「そういうところは一番楽しかったですね」。初めて戦う海外試合で、その雰囲気を堪能した。だからこそ「ギャラリーがたくさんいて、楽しかったから、いいプレーがしたかった」という思いが込みあがり、それが涙に変わった。
それでも72人から30人へと絞られる予選を通過し、誰もが憧れるオーガスタをプレーした事実が色あせることは決してない。「マスターズを観るたびに、『ここはどういうショットを打ったな』とか思う。やっぱり一生の思い出に残る試合でした」。これがいい記憶になるまでに、そんなに時間を要することはないはずだ。
今年は2度目の受験となるプロテスト合格が、大きな目標となる。「そこに向けてもいい経験になればと思います」。この3月に高校を卒業したばかりの18歳にとって、この数日間は結果以上の大きなものを与えてくれるに違いない。(文・間宮輝憲)
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