<BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 初日◇2日◇宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース(茨城県)◇7387ヤード・パー71>
BMWの冠がついた今年のツアー選手権はいつもと雰囲気が違う。練習ラウンドをしたプロたちは「ラフが短い」とみな口を揃える。確かにメジャーセッティングにしてはラフがかなり刈りこまれている。
ツアーディレクターを務める田島創志はラフを短くした理由について、「BMWさんをタイトルスポンサーに迎え、今年からイメージを変えていきたいという話があり、その1つとしてラフを短く設定しました。宍戸が持っている距離の長さでメジャートーナメントを開催します」と話す。
昨年も今年も18ホールの総距離自体は7387ヤードと変わらない。しかし、ラフが長かった昨年はホールによってティを前に出したりして、実際の総距離はもう少し短かかった。ラフに入れば、出すだけのショットになり、それだけで1打失うことになるからだ。しかし今年は、ラフでもグリーンを狙っていけるショットが増える。だから7400ヤードという長さをフルに使って、選手たちの技術を引き出そうという狙いがある。
たっぷり距離があるため、ラフが短くなっても簡単になるわけではない。しかもグリーンは13フィートと速く(通常のトーナメントは11フィート前後)、コンパクションも24〜25と硬く仕上がっている。
田島には「海外で戦える選手を育てたい」という思いもある。「海外で戦っていくためには、距離の長いコースに対して戦っていくことが必要です。それに、日本の選手は池があるホールでアグレッシブにいけない傾向があります。海外では池の際に立っているピンにも打っていかないといけない。その狙っていく部分を17番で出したい」と話す。
481ヤードと距離が長い17番パー4は、スコアを落とさずに切り抜けることが勝敗を分けるキーホール。昨年大会の4日間の平均スコアは4.494と一番難易度が高かった。やや右にドッグレッグしていくティショットは、フェードボールでないとフェアウェイに置くのが難しく、右のOBは浅い。そしてセカンドショットは池越えとなる。
水曜日に行われたプロアマでは、風がアゲンストだったため、セカンドで200ヤード以上残る選手が多かった。ロングアイアンもしくはユーティリティでの正確なショットが求められるのだ。前回大会覇者の木下稜介は、この難しい17番を4日間2バーディ・ボギーなしで乗り切り、「それが勝てた要因」と振り返る。
今年の17番は右サイドにファーストカット、セカンドカットを設けて芝の短いエリアを拡大。昨年までならラフに入れば、グリーン左サイドのフェアウェイにレイアップして3打目勝負でパーを拾うゴルフだったが、今年はラフからでも狙うことが可能になる。残り200ヤードのラフから池越えでグリーンを狙っていく状況は、米ツアーでは当たり前のようにあるが、日本ではあまりない。
「ラフが短いといってもスポッとボールが入るので、それなりのパワーや技量、マネジメント能力が無いと攻めていけない。狙うのか狙わないのか、とにかく選手に迷わせるのがテーマです」と田島はいう。
では、今年のセッティングについて選手たちはどう思っているのか。
「ガラリとセッティングが変わった」という印象を持つ石川遼は、「ここ20年のなかで一番ラフが短いとコースの方から聞きました。確かに記憶にないくらいラフは短い。ラフが深いと出すだけのショットが増えて、技術ではどうしようもないところが今まではありました。今年はみんなが打てる状態のラフだと思うので、そのなかでフライヤーしたり、どれだけ芝が絡むのかっていうのをしっかり合わせていける選手が上に行ける」と語る。
米国男子ツアーや欧州男子ツアーに参戦した経験を持つ谷原秀人は、今年のラフが短いセッティングを「非常に面白いと思います」と感じている。「7400ヤードとしっかり距離があるコースなのに、7100ヤードでやるのはもったいない。海外に出たときはロングアイアンでどんどんバーディチャンスにつけていくゴルフをしないといけない。そういうポテンシャルがあるコースなので、今年のひと味違ったセッティングはフェアでいいなと思います」。
谷原は続けて17番にも言及する。「17番は一番後ろのティだと、セカンドでピンまで200ヤード近く残って、いつもはラフに入ればレイアップ。それが今年は狙いたくなる。フライヤーを計算して、フライヤーしなかった池なので、難しさが出てくる。17番はエキサイトすると思いますし、考えさせられる楽しいセッティングですね」。
この試合に優勝すれば、ただ国内メジャータイトルを獲得できるだけでなく、6月下旬にドイツで行われるDP ワールドツアー(欧州男子)「BMWインターナショナル・オープン」と、 10月に日本で開催される米国男子ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の出場資格が付与される。まさに海外挑戦への試金石となる大会となりそうだ。(文・下村耕平)
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