<ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 初日◇9日◇麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県)◇6809ヤード・パー72>
大会週の水曜日に行われたプロアマは、障害者ゴルファー2人とプロがラウンドする3人1組のチャレンジドプロアマとして行われた。そのなかには日本選手トップとなる障害者ゴルフ世界ランキング38位の小山田雅人の姿もあった。
2歳のときに不慮の事故で右前腕をなくした小山田は、中学時代には野球部のピッチャーを務め、県大会で準優勝した。19歳で本格的にゴルフをはじめ、障害者の世界大会では部門別で何度も優勝経験がある。2014年にはPGAのティーチングプロ資格を取得。「右腕の前腕から先がないので、右手は義手をつけて添えるだけ」なのに、左手1本で250ヤードを飛ばす。ハンディキャップは2.2、55歳のアスリートゴルファーに飛ばしのコツを聞いてみた。
「左腕だけで打つとスピン量が減ります。いまはどこのドライバーも低スピン。球を上げないと、ドロップしてしまうので、ロフトで上げてアッパーに振り抜いています。それでも1500回転くらい」。ヘッドスピードや打ち出し角にもよるが、ドライバーの適正スピン量は2000回転台前半が適正といわれているので、1500回転はかなり少ない。
左を向いてフェースをかぶせる独特なアドレスにも飛ばしの秘密がつまっている。「私はオープンに構えて、インサイド・アウトに大きく振ってドローボールを打っています。オープンに構えるのは体のネジレを大きく使って飛ばしたいから」。その大きなネジレを作るには、土台がしっかりしていないとダメ。「足を徹底的に鍛えています。野球をやっていたころはピッチャーで走り込みをかなりやっていましたから、それも役立っています」と、左手一本で飛ばす技術も体力も兼ね備える。
義手ゴルファーならではの悩みもある。「インパクトで右手が左手を追い越すときに、義手の小指が左手に当たって壊れたりたりするので、小指の部分に鉄を入れて補強したりしています」と小山田。また、遠征中に壊れても困らないように、SNSには7本の義手を持ち歩く写真もアップされている。
さらに、一般ゴルファーにもアドバイスを求めると、「左手で振っている人はフォローで左ヒジが伸びてしまうのですが、そのままフィニッシュまでいくと右肩が回り切りません。フォローで伸びた左ヒジをしっかりたたんでフィニッシュを作ることで、右肩が回って飛距離が出せます」と教えてくれた。小山田の飛ばしには、ツアープロとはまた違った凄みがある。
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