強風に見舞われたコングレッショナルCC。メジャーの舞台に相応しい難コースが牙を剥いた。終盤はレクシー・トンプソン(米国)とチョン・インジ(韓国)との白熱の戦いだった。
前半に4打落としたインジをレクシーが一時は逆転した。しかし、2打リードしていたレクシーは16番パー5でアプローチをミスしてボギーとすると、一方のインジは2メートルを沈めてバーディ。トータル5アンダーで二人が首位に並び残り2ホールへ…。だが、この2ホールはスロープレーの「計測」が入り、ルールオフィシャルがタイムを計った。
実は前日の第3ラウンド、最終組のプレーがなんとホールアウトに『5時間45分』を要し、米国内で放映したNBCが最後の30分をCNBCでの放映に切り替える、という事態が発生していた。米国内で女子ゴルフが日本でいういわゆる「地上波」の3大ネットワークで放映されることは稀(まれ)。メジャーならではのNBCでの放映だっただけに、非常に残念な出来事だった。
17番パー4。インジは3メートルのバーディチャンスにつけながら外れてパーに。レクシーはそれよりもやや短い3メートルにつけていたが、オーバー。返しも慎重に打ったがカップを通り過ぎ、悔しさで唇を噛んだ。
最終18番パー4。レクシーのティショットは大きく右に曲がり深いラフへ。右前に木もあり、何度も状況を確認して打ったセカンドは見事に4メートルのチャンスについた。しかし、入れればプレーオフというこのバーディパットも入らず。天を仰いだレクシーは、インジを笑顔で祝福。大会は美しく幕を下ろしたかに思えた。
しかし、実は17番、18番のタイムは規定時間を超えていた。レクシーともう一人の最終組だったチェ・ヘジン(韓国)には、18番グリーンから降りるときにオフィシャルから『スロープレーによる罰金』を通達された。
その金額は「2000ドル」(約27万円)だったと、レクシーの父、スコットさんが米メディアのゴルフウィーク誌に伝えている。
前日の超スロープレーをTV観戦していたジャスティン・トーマス(米国)は自身のツイッターに「スロープレーには反対。しかし、女子選手がメジャーで勝つために戦っている。計測なんかしないで欲しい」とコメントをアップした。
2019年以来の勝利がかかっていた。そのレクシーに突き付けられた『スロープレー』の通達。悔しさいっぱいに唇を噛むとメディア対応はせず、集まったファンには笑顔でサインをしてコースを去った。(文・武川玲子=米国在住)
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