今季の半分の試合が終わった国内女子ツアーは一週間のオープンウィークとなります。初優勝から一気に5勝を挙げた西郷真央、スタートダッシュに失敗しながらも修正した稲見萌寧など上半期から大きなトピックがありました。残りは19試合、どんなドラマが生まれるのでしょうか。ツアー取材担当が後半戦に活躍しそうな選手をピックアップ。今回は“令和のベン・ホーガン”と呼びたいショットメーカー。
最初に断っておきます。「現場記者のチューモク」と銘打っておきながら、私は今年女子トーナメントに行ってません。出会いは昨年たまたま見つけたある選手のインスタグラム。そこに投稿されていたスイング動画に目を奪われました。タメが半端ない…。それが当時まだシードを持っていなかった植竹希望プロでした。
スイングがきれいな女子プロはたくさんいますが、彼女のスイングは別格。“神の子”と言われた天才ショットメーカー、セルヒオ・ガルシア(スペイン)を彷彿(ほうふつ)とさせます。“ゴルフスイングの教科書”と言われたベン・ホーガン(米国)を思い浮かべる人もいるでしょう。
トップが低くてフェースローテーションが少なく、インパクトでまったく手元が浮かない。AIにクラブの理想的な動きを計算させたら、きっと植竹プロのスイングになるのではないでしょうか。ただスイングがきれいなだけでなく、『パーオン率』や『トータルドライビング』、『ボールストライキング』といったショットの能力を示す数字が軒並み高い。ますます興味が湧いてきました。
どうやってスイングを作ったのか? 昨年リモート取材を敢行。初対面にもかかわらず、ときにはスマホの前で遠ざかり身振り手振りを交えて、丁寧に答えてくれました。ボールも曲がらないけど性格も真っすぐ。聞けば、コーチを付けずにPGAツアー選手のスイング動画とゴルフ系YouTubeを見て我流でスイングを作ったとか。本当に天才的ですね。しかも、自分のスイングを感覚ではなく言語化できる。内容は割愛しますが、興味がある人は記事を読んでみてください。
植竹プロはその後、初シードを獲得して、今年の4月にはツアー初優勝を達成。優勝インタビューの涙にもらい泣きしました。現場ではなくテレビ観戦ですけどね。
植竹プロがコーチを付けない理由は「その人の意見しか聞きづらくなっちゃう」から。男子プロにもファン(?)がいて、田中秀道プロや片山晋呉プロも気にかけているようです。コーチと二人三脚でスイングを作って戦う選手が多い中、「いろんな人の意見を取り入れて、自分に合うようにアレンジしていく」という植竹スタイルで、どこまで登っていけるのか。日本一? いや世界一まで期待しています。(文・下村耕平)
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