2022年のステップ・アップ・ツアー9戦目となる「山陰ご縁むす美レディース」が鳥取県の大山平原ゴルフクラブで24日(水)に開幕する。昨年からはじまった大会は、大山の裾野に広がる戦略的なコースで開催。今年は佐伯三貴がコースセッティングを担当する。フラットながらグリーンの傾斜が多いのが特徴。どんな戦いが展開されるか楽しみだ。そこで同ツアーを放送するCSチャンネルのスカイAで16年からラウンド解説を行うプロゴルファーの下村樹美に今週の見どころを聞いた! 今回は中国女子ツアー優勝経験者を紹介!
■苦節6回目でつかんだプロゴルファーの肩書き
昨年6月に行われた最終プロテストで見事に合格を果たしたのが平井亜実。初受験から数えて5回目での合格だった。晴れてプロとなり、本格的に戦う初めてのシーズンで、いきなり優勝を果たしたのはステップ前戦の「カストロールレディース」。大会2日目に「65」をマークし首位に立つと、最終日も4つ伸ばしうれしい初優勝を勝ち取った。
そんな平井に注目していたという下村。この優勝を勝ち取る前に行われた6月の静岡大会で練習ラウンドを見ていて、「しっかりしたゴルフをする選手だなと思いました」と視線を注いでいた。「元々のプレースタイルはバーディも出ればボギーも出るというもの。攻撃的なゴルフです。だから上位にも入りますが、下位もあるというスタイルでした」。
今年の成績を見てみると、確かにその静岡での戦いでは予選落ちとなっているが、開幕戦からコンスタントに成績を残し、トップ20が2回。そして7月末に悲願の優勝を果たしている。「コースマネジメントの力を上げることによって、予選落ちを減らせたと言っています」と攻める姿勢は変えずに、そこに少し変化を加えて栄冠をつかんだ。
「ルーキーや若い選手は短期間のあいだで、一気にゴルフの内容もフィジカルも伸びるのが特徴です。言い換えれば、伸びしろばかりなんです。プロテストに受かってからの1年間というのは一気に変わって、成績にも現れるんです」。今季のステップ・アップ・ツアーはルーキーの活躍がめざましい。そんなところに平井の覚醒の理由があるのかもしれない。
■飛ばしのコーチと作り上げたスイングは「大きい」
「平井さんは7年間コーチを変えずにやってきています。コーチの浦大輔さんはドラコンで有名な方。平井さんは身長こそ156センチと大きくありませんが、スイングを見るととてもダイナミック。ショットを打っている姿は大きく見えるんです」と下村。15年のプロテスト会場で知り合い教えを受けるようになってからは紆余曲折もあったが、信じて戦ってきたからこそ、結果を出すことができた。
「プロテストに合格したのは(浦)先生のおかげと言っていました。いまでは珍しい師弟関係。一から作り上げての師弟関係は愛情があるからこその関係ではないでしょうか。優勝報告のYouTubeでは浦さんが泣いているんです。本当にすばらしい関係ですよね」(下村)
国内のプロライセンスを取得するのに時間はかかったが、そのあいだも中国ツアーの予選会に挑戦し、出場権を獲得すると、日本人としてはじめて同ツアーでの優勝も経験。苦労してきた期間のなかでも、国内初優勝までの道をともにつくりあげてきた。
「今後がとても楽しみです。いまではやりたいスイングのためにはどんな筋肉をつければいいか、そのためにはどんなトレーニングをすればいいのか。そのためにはどんな食事がいいのかといった連動性を持たせてスイングも体もつくっている。これからも伸びしろが多いのではないでしょうか」とさらなる期待が持てると下村はいう。
■賞金女王に向けての争いはここから激化
「最近のレギュラーツアーを見ていると、ステップの選手が多数活躍しています」。たしかに今月初めには18歳のルーキー・櫻井心那が優勝争い。成澤祐美も予選通過常連。泉田琴菜も上位をうかがう位置でのプレーが続く。
これに対して下村はこう説明する。「ステップでも勝つのが難しくなってきています。ステップの選手がいまはとても“熱い”。ステップの選手の存在感がレギュラーツアーでも増しているんです」。今季のステップは開幕戦から初優勝者が続出し、昨年のプロテストに合格したメンバーも続々優勝を遂げている。ここまで8戦だが複数回優勝はなく、競争が激化。その影響で全体のレベルアップが実現している。
「パワーバランスが分散しています。毎年大勢のルーキーが入ってきて、これからはステップに出るのも簡単ではない。QTも難しくなる。底上げができているのがいまの女子ツアーです」
今大会を終えれば、残り8試合。高額賞金も多く残されており、来季のレギュラーツアー前半戦の出場権が得られる賞金ランキング上位2名を争う戦いも激しくなる。賞金女王争いがますます熱を帯びてくるのは間違いなさそうだ。
解説・下村樹美(しもむら・じゅみ)
1988年5月13日生まれ、愛知県出身。2011年にプロテストに合格。ケガなどもあり一線からは身を引いたが、16年からはスカイAでラウンド解説をしている。プロ目線での解説が好評。今年もステップ・アップ・ツアーから選手のプレーの模様や声を届ける。
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