「AIG女子オープン」に36歳にして海外女子メジャーに初出場した藤田さいき。結果としてはトータル19オーバーの142位だったが、悔しさとともに持ち帰ってきたものは少なくなかった。その証拠として復帰戦となった「CAT Ladies」では7位タイ、さらに「ニトリレディス」では5位タイといきなり好成績を残した。ベテランは異国の地で何を感じ、どう変わったのか。帰国直後のインタビューから紐解いていきたい。
冒頭で藤田は「スコットランドに行った記憶がない(笑)」と言った。それは冗談のようでもあったが、同時にこれまで戦ってきたプライドを感じさせる言葉でもあった。そこから少しずつ、少しずつ「あっという間だった」という一週間について話してくれた。今回は帰国直後から始めたことについて。
―全英を経て日本の試合への気持ちは?
もうちょっとこうしたらゴルフがうまくなる、強くなるということが素直に道として見えてきた。全部いじっちゃうとおかしくなっちゃうし、いじる必要もないと思う。そうじゃなくて、もっとこうしたら強くなるなとか、優勝に近づくなという気持ちは出てきました。
―大きく変えることだけがいいわけじゃないですよね?
大きく変える必要はないですからね。変な話、そこは道具に頼ってもいい部分だし、自分のなかではこうしたいなというのが日本にいたときはあったけど、向こうの人たちは極端な話、打ち方とか関係ないじゃないですか。本当に気持ちが強いとかタフとか、もうちょっと自分なりに固めていい部分もあるんじゃないかなって。柔軟過ぎてもダメだし、硬すぎてもダメだなと思いましたね。
―小さなことで始めることはなんですか?
わたし、アライメントスティック(編集部注:ショット練習のときに地面に置いて正しい方向に向いているかをチェックする棒)を使ったことなかったんです。でも海外の選手はみんな使ってる。日本でも増えてきていますよね。
そこで感じたのは、私はそもそも打ちたいところに打てているのかってことなんですよ。
そのチェックを怠っているよね、と。そこから始めてみようと思います。ピンポイントに打たなければいけないという感覚も忘れていましたね。ティショットから「あそこに置くんだ!」と打たなければいけなかった。そこに置くにはどこに落として、どれだけランして…。そういったことを忘れていましたね。
―リンクスだとそれが顕著に出る
そうなんです、それも準備不足。知らなすぎた。日本みたいに「あの木!」とか「あの鉄塔」とか目印になるものがない。フェアウェイに打ったって、方向がズレていればランでラフに行く。2打目地点に行ってみると、なんでボールがここにあるのって感じでした。そのランの計算とかも向こうの人たちは慣れている。うまいなと思いました。ちゃんと自分で打ちたいところに打ち出せているかという単純な作業をしていなかったと感じました。
―普通にアドレスして、打って、よかったな、だったということですか?
アバウトすぎましたよね。そこは反省の一つとしてある。それは日本で練習していくなかでやっていくこと。わたしやったことないので。
―アライメントを間違わなければ大ケガにはならないですもんね
そうなんです。そんなブレがない。そういうのをまずやって確認しないといけなかったなって。全部が全部マネすることはないけど、単純な作業は必要なんだって。スティック持っているのに(笑)。
―やらなかった理由があったのでしょうか?
練習器具を使うのが苦手でした。昔ながらというか。でも、それだけじゃだめなんだと思いました。そういうこともやっていかなければいけない。でも、いきなりいろいろと使うのではなくて1つずつ。もうちょっと精度上げていったほうがいいなって。そこが自信つかないといいショットが打てないかなと思いました。
―感覚を大事にしていた部分もありますか?
でも、結局感覚も若いうちは研ぎ澄まされているからいいけど年齢とともに落ちてくるもの。だから、そこは感覚とアライメントが合っているかのチェックはするべきでした。
―大事にしつつ
そう、感覚は大事にしつつ、基本作業はしっかりとやる。それが大事だなぁと。
藤田さいき(ふじた・さいき)/1985年11月22日生まれ、栃木県出身。中学2年生からゴルフを始め、高校卒業後は地元栃木県のゴルフ場で研修生となり腕を磨いた。05年の「フジサンケイレディス」でプロデビュー、翌年の「プロミスレディス」で初優勝を挙げた。10年の「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」で国内メジャー初優勝。11年に会社員の一般男性と結婚した。年齢を感じさせない飛距離はツアーでも最上位クラス。今年は11年ぶりの優勝に期待がかかる。168cm・65kg
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