<パナソニックオープン 3日目◇24日◇小野東洋ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7113ヤード・パー72>
前日に国内女子ツアーで山下美夢有がツアー記録となる「60」をマークしたことを意識して、“その気”になったアマチュアの蝉川泰果(せみかわ・たいが 東北福祉大4年)が大爆発。1イーグル・9バーディの「61」をマークしてトータル16アンダーまで伸ばし、前日の33位タイから首位タイに浮上。史上6人目のアマチュア優勝をぐっと近づけた。
いわゆる裏街道の10番から出た蝉川は、いきなり2打目を70センチにつけてバーディ発進。11番パー5で3メートルを沈めて連続バーディとすると、15番パー5では268ヤードの2打目を3番アイアンで1メートルにつけてイーグル。「あと4つぐらい伸ばしたいなと言っていたら、キャディが『いやいや今日は12アンダーなので』と言われて(笑)」。
33位タイで予選通過を決めた前日、女子の山下が「60」の12アンダーで回ったことを知った。今大会キャディを務める大学の1年後輩の中村凜さんに「俺も明日12アンダー目指すか」と話していた。そのことを覚えていた中村キャディは、4つ伸ばしていてもさらに発破をかけた。
17番パー3で10メートルを沈めて5つ伸ばして折り返す。後半も16番からの3連続を含む6つのバーディで「61」の完成。今大会の18ホールの最少ストローク記録(19年の石川遼の「62」を更新)であり、ツアーにおけるアマチュアの18ホール最少ストロークも2打更新した(2000年の宮里優作、19年の金谷拓実、同年の中島啓太。いずれも三井住友VISA太平洋マスターズでの「63」)。
「今週優勝を狙っているので、意気込んで3日目で6打差ならまだあるなと思ってやった結果、ショットもパッティングもいい感じにハマりました」と自己ベストとなるビッグスコアに笑顔を見せた。
今年は自信を深める年になっている。国内男子ツアー「関西オープン」では単独首位で予選を通過して優勝争いの末、17位タイ。その2カ月後、国内男子下部のABEMAツアー「ジャパンクリエイトチャレンジ」でアマチュア優勝を遂げた。そして、今月上旬に行われた「世界アマチュアチーム選手権」の個人戦で3日目まで首位を守りながら2位。それでも、世界のトップアマと対等以上に渡り合たことで「自分もやれる」と手応えを感じられた。
タイガー・ウッズ(米国)が名前の由来の蝉川は、中学3年生の頃からドライバーの飛距離が伸び始めた。今では300ヤードを超え、多用するのが蝉川のスタイルだ。最近は「刻むゴルフ」も覚え始めていたが、「世界アマ」の時にJGAナショナルチームのガレス・ジョーンズコーチから「もっとドライバーを打て」と言われて攻める思考を思い出した。
「ドライバーを多用することでいろんな意味でチャンスが広がります」とビッグスコアが出やすくなる。今大会は左右にOBがあるなどタイトなホールが多く、ドライバーを使わない選手も多いが、「レベルの高いプロたちの伸ばしあいなので、僕が武器のドライバーを使わないと勝負できない」とドライバーを多用してこの日の「61」につなげた。
4日競技の「世界アマ」では2位に5打差の単独首位から出た最終日に逆転されて2位に終わり、チームとしてもメダルを逃した。「ここで負けてしまうと負け癖がついてしまうのは経験上わかっています。ここで勝つか、負けるかで自分の人生が変わってくると思いますので、克服しないといけない壁だと思って明日臨みます」。昨年大会は同学年の中島啓太が史上5人目アマチュア優勝を遂げ、今年はプロとして出場している。中島をライバルとし、追い越す気持ちを強く持つ蝉川が史上6人目のタイトルに挑む。(文・小高拓)
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