<トップ杯東海クラシック 3日目◇30日◇三好カントリー倶楽部西コース (7,325ヤード・パー72)>
国内男子ツアー「トップ杯東海クラシック」の3日目、前日16番パー3で星野陸也がグリーン左のガケ下からボールをねじ込んでバーディを奪ったが、同じホールで今度は悲劇が起こった。
その主人公となったのが、スンス・ハン(米国)だ。この日の16番はピン位置がグリーン手前から29ヤード奥にあり、通常よりも距離が長い。しかも、左からのアゲンストが吹いているので、どの選手も長めのクラブを持たなければいけなかった。
ハンはティショットでピンの右横を狙ったが、思ったよりも左へ飛んでいったこともあり、そのままガケ下へとボールが消えていく。2打目は自分でもうまく打てたと思ったらしいが、無情にもガケを上がり切らず、コロコロと再びがけ下へ。3打目、4打目、5打目と打ったものの、リプレイボタンを押したかのように、ボールは自分の足元へ戻ってくる。この時点で、ハンは「正直、自分で何打叩いたのか覚えていない」という状態。ようやく6打目でガケ下から脱出してグリーン右サイドのラフに。しかし、悪夢はまだ終わっていなかった。
「ライが悪く、ピンに向かって打つことはできない」と判断し、ピンの右を向いて打った7打目はグリーンを転がり抜け、ラフへ。そこで止まったかに思えたが、ゆっくりとガケ下へ転がり始める。「もうわけが分からず、グリーンを吹き飛ばしてやりたいと思いました」。まさかの悪夢再来。ガケ下へ戻っていくハンの足取りは重かった。
そこからはプランを変更。8打目をティグラウンド方向へレイアップし、ピンまで60ヤード地点から放った9打目はは右のカラーで止まる。そこから寄せた後に1パットで沈め、ようやくホールアウト。要した打数は実に“11”。詳細なデータが残る85年以降ではこれまで最多打数が“9”とされていたが、それを2打更新する大叩きとなった。
「とりあえず、今日のことは今日のことと割り切って、明日はできること自分なりにやるだけです」と気を取り直したハン。結局、この日は“79”を叩き、トータルイーブンパーにまでスコアを落とす結果に。順位も3位タイから40位タイに急降下。目前に見えていた悲願のツアー初勝利は遥か彼方に消えた。
対照的に、前日チップインバーディを奪った星野は、片山晋呉からのアドバイスを受け、練習日にガケ下からグリーンに向かって打ち込んでいた。その星野は首位から3打差でV争いに絡んでいる。今となってはせんなきことだが、あらゆる事態への想定こそが、勝利を掴むための大事な要素なのかもしれない。
文/山西英希
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