メキシコで開催されたOHLクラシック・アット・マヤコバは、悪天候による不規則進行になったが、それでも現地のゴルフファンを強く惹きつけていたのは、米国のスター選手、リッキー・ファウラーだった。
全米オープン覇者が2度目の来日!
世界ランク10位で今大会を迎えたファウラーは出場選手中の最高ランカー。他のトッププレーヤーたちがオフを取っている中で、なぜファウラーはメキシコまで足を運んだのかと言えば、「4年間で1度も出場していない試合に出よ」という米ツアーの決まりに従った決断だった。
昨季の米ツアーが終了し、その翌週にプレジデンツカップで戦って以来、5週間ぶりの試合出場。今季をメキシコから発進するというファウラーにとっては“異例”のスケジュールを組んだが、前週の土曜日に現地入りしてから火曜日までクラブを一度も握らずビーチでリゾート気分を堪能していたそうだ。
「こういう場所でエンジョイしながらゴルフができるのは、とてもハッピー!」
そんな幸せ気分がゴルフにも好作用をもたらしたようで、36ホールを一気にプレーすることになった日曜日をファウラーは首位タイで迎えた。
4連続バーディーを奪った第3ラウンドの前半までは優勝に向かって快走していた。だが、終盤17番でボギーを喫し、首位から陥落。それでも、なんとか優勝争いに踏みとどまっていたが、終盤16番、17番の2連続バーディーでも首位を走るパットン・キジーアには追いつけず、1打差の2位に甘んじた。だが、「今季のグッドスタートが切れた」とファウラーらしい爽やかな笑顔を見せた。
米ツアー初優勝を飾ったキジーアの戦いぶりは実に見事だった。米国の国民的スター選手であるファウラーと競いながら、しかも初優勝のプレッシャーがかかる中、最終ラウンドをノーボギーで戦い抜いたキジーアのメンタリティが何より素晴らしかった。
72ホール目はフェアウエイバンカーのすぐそばの不安定な足場からセカンドショットを打つという窮地に陥った。キジーアがパーでファウラーがバーディーならプレーオフ、キザイアがボギーを叩けば、勝利を奪われる可能性もあった。だが、キザイアは冷静にグリーンを捉え、最後は余裕の2パットで勝利を決めた。
「ドキドキしたけど、以前、もっとひどいライに遭遇したこともあったので、その経験が活かせた。リッキーはワールドクラスのプレーヤー。彼との戦いはスペシャルバトル。この優勝は大きな自信になった」と、キジーアは興奮気味に語っていた。
31歳のキジーアは2015年にウエブドットコム・ツアーで年間2勝を挙げ、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに選ばれて、翌年から米ツアー参戦を開始した。
これまでは米国内でも無名に近い存在だったが、今季は開幕シリーズのサンダーソン・ファームズ選手権で10位タイ、シュライナーズ・ホスピタルズ・オープンで4位タイ、そして今週は優勝を飾り、来年のマスターズや他のメジャー大会、ビッグ大会への切符を手に入れ、フェデックスカップランキングでは、もちろん自身初の1位へ躍り出た。
すでに米メディアは「新たなるスターの誕生」と持て囃し始めている。若年化に拍車がかかる昨今のプロゴルフ界において「31歳のニュースター」は、やや遅咲きではある。
だが、ジュニア、カレッジ、下部ツアーという長く険しい階段を歯を食い縛りながら昇ってきた選手たちの底力は、きっかけとチャンスさえあれば、一気に大きく開花する。
ジャスティン・トーマスもそうだった。トーマスと同期で昨季のツアー選手権を制したザンダー・シャウフェレもそうなりつつある。そして今週は、やや遅咲きながらキジーアがそれに続こうとしている。
そう、ニュースターはこれからも続々と誕生する。そんなうれしい予感が漂った最終日だった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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