戦いの中でのスイング改造はやはり難しいのか。石川遼は先週開催された「三井住友VISA太平洋マスターズ」において、国内ツアーでは自己ワーストとなる5戦連続での予選落ちに終わった。同大会は石川が2010年と12年に2度制した相性のいい大会。そこで、2日間トータル8オーバー79位と最下位に近い位置で予選落ちを喫してしまった。同大会ではテレビ解説を務め、練習場で石川の目の前に立ってスイングを見た加瀬秀樹に話を聞いた。
国内ツアー通算4勝を誇り、97年に米ツアー挑戦経験がある加瀬。日本ツアーに復帰した10月の「日本オープン」で石川のスイングを見たときは「衝撃的だった」と振り返る。その時点では「ものすごいフックを打っているのに驚いた。目標に対して右を向いて構え、強いフックボールを打っていた」。加瀬がこれまで見てきた石川のスイングからはガラっと変わっていたという。
石川自身、ドローボールを重点的に練習していると話していた。太平洋マスターズでは他の試合同様、2日目の10番(パー4)でドライバーでのティショットがプッシュアウトし、林の中のラテラルウォーターハザードに入ってダブルボギーを叩くなど、ティショットのミスからスコアを崩す場面が目立った。初日の6番(パー5)では左の林に入れてダブルボギーにするなど、ティショットが右へ左へ曲がり、非常に不安定な状態だった。初日の1番では、フェアウェイからの2打目のアイアンショットが大きくグリーンを外すなどショット全般で安定感がなく、予選ラウンド2日間で石川はフェアウェイキープ率が28.57%で81人中78位タイ、パーオン率にいたっては38.89%で81位と最下位だった。
加瀬は「スイングプレーンはキレイですが、目標に対してインサイドアウトになってしまっている。だからプッシュするし、左にも出る」と分析。少しでもインパクトのタイミングが遅くなればプッシュ。ダウンスイングで下半身が止まればフェースが閉じて引っ掛け。フェースの開閉や手首の動きを抑えるといった石川にとって安定感を増そうとしている新しい動きが、まだ体になじんでおらず、インパクトが安定していない。
また、アドレスも「おかしくなっている」と話す。「アドレスの向きとボールを飛ばしたい方向への目線が合っていないと思う。打つ場所が一緒の練習場では良くなってくるだろうけど、コースで結果が出ていないのはそれが原因の1つでは」と指摘する。打つ前から、石川のスイングには狂いが生じてしまっているようだ。
スイング改造は「時間がかかるもの。あれだけ大きな動きをしているのならば、なおさら。でも、こういうものはなにかきっかけみたいなものが掴めればポンと直ることもある。練習やラウンドの中で“あ、これじゃないの”というものがくる時があるからそれを待つしかないと思う」。石川自身も太平洋の大会初日に「何かをきっかけをつかみたい」を話していたが、練習を重ねながら“その時”を待つしかないようだ。
「本当に今は大変な時期だと思う。球筋を変えるにはクラブのことも考えなければいけないし。彼の場合はオフがないでしょう?やりながら試していくしかないよね」。日本ツアーは12月でオフを迎えるが、石川は来年1月から米国の2部ツアーに参戦予定。試合中にスイング改造を試みるのは至難の業だが、石川には時間が残されていない。「思わず声をかけたくなるもの、大変だなと。何とかがんばって欲しいと思う。それだけプロが見ても大変なことをやっていると思う。本当に苦しんでいると思う」と選手目線で見ても難しいことに取り組んでいるという。「マイナビABCチャンピオンシップ」ではジャンボ尾崎が。「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」では青木功が。レジェンド二人が石川に練習場でアドバイスをしたが、加瀬もその気持ちは痛いほど分かるようだ。
苦しいプレーが続く石川。多くのベテランたちが心配する現状だが、そのプレーに光が射す日はいつになるのか―。
<ゴルフ情報ALBA.Net>