今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第4回は今季2勝を挙げる活躍を見せた上田桃子をフォーカス。その上田らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
【スイング連続写真】飛躍の要因はフットワークと右ワキにあり!
今季はツアー2勝を挙げ、賞金ランキング6位と活躍した上田さんですが、成績がよかった要因は、ボールに加わる回転が変わったことにあります。基本的にはドローヒッターなので昨年までは左回転がかかっていましたが、今年はストレート回転となり、しかも高弾道になりました。クローズ気味に構え、目標の右を向くクセを修正し、目標に対してスクエアに立てるようにしたことが影響していますが、ストレート回転になったことで、ボールをうまくコントロールできるようになったと思います。
ただ、個人的な意見を言わせてもらうならば、ダウンスイングの切り返しで右ワキが開かなくなったところに注目したいですね。悪いときの上田さんは右ワキが開いてしまい、右ヒジが体につくことはありませんでした。理由は、体重移動を勘違いしていたことにありました。左足に体重を乗せれば乗せるほどボールに力を伝えられると思い、下半身を動かしすぎていたのです。その結果、右腕と体の距離が開き、右ワキに空間ができていました。昔からゴムチューブを上体に巻いて練習していたのも、右ワキの開きを抑えたかったからです。ところが、今年は意識しなくても右ワキが締まっています。体重移動を小さくすることでタイミングをとりやすくなり、ボールの手前でダウンスイングの切り返しを行なえるようになったからです。その好影響として、クラブヘッドが遠回りすることなく、ボールに体の重さをしっかりと伝えられています。飛距離が伸びた理由もここにあると思います。
また、以前は体重を左足に移動→腰を回す→ヘッドを下すという感じでしたが、これだとインパクトのタイミングが遅れて、体が開いてしまう傾向にありました。クラブは円を描いて下りてくるため、どうしてもタイムラグが発生するからです。その対処法として、やはり体重移動を小さくすることで、左足の親指に体重が乗るタイミングとインパクトのタイミングを合わせるようにした結果、体の開きを抑えられるようになりました。体重移動とインパクトを同じタイミングで行うようにしたわけです。これも飛距離が伸びた一因でしょう。
実は、上田さんの場合、アドレスにものすごいこだわりがあります。アドレスの形さえよければいいショットを打てると考えており、重要度はスイング全体の7〜8割を占めています。いつも同じアドレスではなく、重心の位置を球筋によって微妙に変えることで調整しているのです。アドレスで球筋を変えることができる数少ない選手の一人だといえますね。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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