今季、国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第5回はツアールーキーながら「マンシングウェアレディース東海クラシック」でプロ初勝利を果たし、賞金ランキング7位に入るなど活躍を見せた川岸史果をフォーカス。“怪物”と謳われた父・良兼の血を色濃く受け継ぐパワフルなスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
ツアー界でも飛距離に関しては1、2を争う川岸史果さんですが、そのスイングには飛ばすための要素が満載です。安定感を生むワイドスタンスに構えると、バックスイングでは左肩を120度近くまで入れています。これだけ上体を捻転しているのは、川岸さんと葭葉ルミさんぐらいです。大げさではなく、全盛期のタイガー・ウッズ(米国)と同じレベルだといえるでしょう。それだけの柔軟性が川岸さんには備わっています。
バックスイングでは、クラブヘッドの位置が体から遠くにあり、それだけスイングアークが大きくなります。バックスイングでヘッドが描く円が大きいのに、ダウンスイングでは右ワキを締め、右ヒジを低い位置に下ろすことにより、クラブをグッと体に引きつけています。この絞り込みが飛距離を生むポイントです。ここでコンパクトな形をつくっているから、フォロースルーで一気に右腕を伸ばすことができるのです。それがヘッドスピードの上昇につながります。もしも、ダウンスイングで右腕が伸びていると、フォロースルーでは右腕が縮むしかないので、ヘッドスピードは上がりません。クラブを上げるときに大きな円、下ろすときに小さな円を描くのは、飛ばし屋の特徴だといえます。
また、右ヒジを絞り込むことによって、ボールのスピン量が上がります。おそらく川岸さんは女子ツアーでは最も多いスピン量でしょう。一つ間違えると吹き上がりますが、スピン量が多いことで弾道が高くなり、ビッグキャリーを生み出しています。体力があり、体幹がしっかりとしているからこそ、右ヒジをここまで絞り込めるのです。
ダウンスイングで驚かされるのは顔の向きです。インパクト直前までボールのかなり後方に視線が向いています。松山英樹選手と同じ形ですが、トップのときから顔の向きが一切変わらないことにより、ヘッドスピードの加速を生み出します。
さらに、下半身の使い方にも要注目です。ダウンスイングからインパクトにかけて、右足の蹴りを使うことにより、効率よくエネルギーを生み出しています。左足に体重をうまく乗せることで、体の開きを抑えています。左足を踏み込む際も、右足のツマ先から左足のツマ先へと体重を移動していますが、その際、左ヒザにしっかりと余裕をつくっています。通常、これだけのスピードでクラブを下ろすと、左ヒザが目標方向へ流れるものですが、まったく移動していません。その分、パワーをロスすることなく、ボールに伝えられるので、飛距離も伸びます。
父親である川岸良兼さんのDNAを随所に感じさせてくれるスイングですが、飛距離だけでいえば、世界レベルでしょう。アプローチやパットの小技を磨けば、すぐにでも世界に通用すると思います。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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