今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第24回は、今年ツアー2勝目を挙げた穴井詩をフォーカス。日本女子ツアーが誇る飛ばし屋のスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
ツアー2勝目を飾った今季の穴井さんですが、ドライビングディスタンスが3位(255.16ヤード)と女子ツアー屈指の飛ばし屋でもあります。極端なフックグリップでクラブを握り、テークバックではクラブフェースを閉じたまま、ヘッドをどこまでも低く長く上げていきます。スイング中はフェースが閉じた状態をキープするという独特のスイングです。
最近のクラブの特性上、穴井さんのスイングスピードに対して、ある程度ボールをつかまえる動きがいくつか入らなければ、フェースが開く動きに変わります。フックグリップに握って、トップでのフェース面が真上を向くようにしたり、スイング中、常にシャットフェースで振っているのも、フェースを開きたくないからでしょう。
正面からの写真を見ると、ダウンスイングの切り返しでは体の軸が傾くことなくクラブを下ろしています。このとき顔を下に向けていますが、顔が上がると上体の前傾姿勢が崩れやすいからでしょう。体を低い位置にキープするにはいい方法だと思います。
フォローではハンマー投げのようにクラブと体との引き合いが見られます。逆C字の形になっていますが、昔の選手によく見られた形です。クラブ自体にエネルギーがないときに、自分で十分なパワーをボールに伝えるためには、このような形にすることが有効でした。現在は、クラブの性能が上がり、体の軸を中心に素早く体を回転することによって大きなパワーを生み出しますが、穴井さんはそのどちらも行うことで飛距離を稼いでいるのでしょう。
昔から懸垂を10回ぐらい楽にこなしたり、腕立て伏せを何回でもできるといったように、体の強さは相当なものです。逆C字の形をつくれるのも、背筋が強いからです。ダウンスイングの切り返しでは傾いてない上体を、インパクトで傾けて頭とヘッドが引き合う形をつくっていますが、フォローではさらに頭の位置が下がっています。それだけ引き合う力も大きくなりますが、これも背筋力や体幹が強いからこそできる業です。最高にボールがつかまる状態をつくり、最高にクラブのしなりを使えるようにしているスイングだといえますね。あとは、力感でスイングしているのを、どれだけシャープにできるかが今後の課題でしょう。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。