今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第25回は、今年から日本ツアーに本格参戦したアン・シネ(韓国)をフォーカス。参戦当時、韓国で“セクシークイーン”と謳われるその容姿に注目が集まったが、全14試合に出場してトップ10入りなしと肝心の成績は振るわず。「ファイナルQT」では71位に終わり、来季の出場権獲得は叶わなかった。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が、シネのスイングに注目。問題点を解説した。
今季、国内女子ツアーに初登場し、人気を集めたシネさんですが、全体的なスイングの型自体は悪くありません。実際、飛球線後方から見てもきれいなスイングプレーンを描いていますし、フェースアングルもいいので、ショットが大きく曲がることも少ないでしょう。ただ、明らかにパワー不足です。1年間戦えるだけの体力がなければ、飛距離も出ません。そこが彼女にとっての大きな欠点といえるでしょう。
パワーを生かせない理由は、バックスイングにあります。右足への体重移動が不完全だからです。トップで右足がピンと伸びているのが証拠です。軸足である右足に体重をしっかり乗せておかなければ、パワーを十分に貯めることはできません。バックスイングでは左足に体重が乗っている分、ダウンスイングでは右足に体重が残ったままクラブを下ろしてきます。俗にいうギッタンバッコンのスイングです。その影響で、ダウンスイングでの手元も高い位置にあります。しかも、パワーがない人にありがちな右ワキの開きも見られます。両手がベルトの高さまできたときに、クラブヘッドがグリップエンドよりも低い位置にあるのは、コックのリリースが早すぎるからでしょう。これもエネルギー効率が悪い原因です。
フォローでの右手首と左手首の間が開きすぎていますが、右腕と左腕の入れ替えが遅すぎるため、フェースローテーションができていません。それだけスイングスピードが遅いということでしょう。
シネさんが好結果を出すには、今ある体を最大限に使うことがテーマです。最大限にパワーを貯め、それを使い切ることができるかどうか。きれいなスイングを目指すよりも、エネルギー効率を研究したほうがいいでしょう。とはいえ、本人もある程度のトレーニングはしているはずです。まずは足の使い方、特にダウンスイングで左足に乗せ切れていない動きを修正するべきです。原因は、重心位置が高いことにあります。高い位置でクラブを振っているから、下半身に軽さを感じるのです。結局は、トップで右足に体重が乗っていないことに起因するので、バックスイングでの体重移動を考えたほうがいいでしょう。右足に体重さえ乗れば、ダウンスイングでの手の位置も変わりますし、躍動感も出てくるでしょう。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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