今季、国内男子ツアーで活躍した選手たち10人のスイングをプロコーチの鶴見功樹氏が解説。第3回目に登場するのはドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率の順位を足したトータルドライビング部門で1位に輝いたドライバー巧者、小平智。ツアーNO.1のドライバーショットを誇る男の“神スイング”を徹底解剖する。
【連続写真】有識者も大絶賛 ドライバー巧者・小平智のスイング
「手元と胸をなるべく離して大きなバックスイングをしつつ、さらにスイングアークを大きくするために手首のコックを遅らせています。飛ばしに必要な2つの動作がきっちりとできています。彼はバックスイングで体重を右に乗せていくタイプですね。トップからダウンにかけては、右にずらした頭を左に戻さずにさらに右に傾けています。インパクトの瞬間も頭は右下を向き、ターゲットとは逆方向に動いています。フォロースルーではクラブと身体の右サイドが引っ張り合い、大きなパワーが生まれます。これが作用反作用の特徴ですが、トップからの切り返しでタメがつくれない人がこれをやろうとすると大きくダフります。タメがつくれる人のみがこの動きを大きく使うことができます。これはほとんどの選手がしていることですが、ここまで大きく使うのは小平選手ぐらいではないでしょうか」(鶴見)。飛ばしのコツを抑え、さらに大きな作用反作用の力を使い大きな飛距離を生み出しているようだ。
また、「シャフトのねじれが少なく、オンプレーンに振っている選手。ねじれが少ないからフェースも常にスクエアの状態を保ち、ミート率が上がりパワーがボールに伝わりやすくなると同時に方向性も良くなります。そして彼はアドレスとインパクトの手の位置がほとんど同じです。大多数の選手は手元が少し浮きますが、この位置に手を戻せることが小平選手の強さ。すごくトレーニングしているのでしょうね」(鶴見)。シャフトの捻れが少ないスイングだから曲がらない。これも大きな強みだ。
そして、小平のスイングの最大の特徴はインパクトの際に左足のカカトが浮くこと。この動きは「意外と日本では嫌われてますよね。ベタ足、左カカトを浮かさないのが正しいようにいわれてますが、実はそうではなくて海外ではリッキー・ファウラー、レクシー・トンプソンやポーラ・クリーマーもカカトが浮いています。小平選手や彼らは左カカトが浮いても体が伸び上がらない。むしろダウンスイングで前傾角度がアドレスより深くなっている。トッププロに多くみられる動きです。左カカトが浮いて前傾も起き上がるなら誰でもできるんです。そうならないためには懐の広さ、体幹の強さ、腸腰筋や大殿筋の強さなどが必要です。また、インパクトの際に左腰を切りながら左つま先を踏み込んで左ヒザを伸ばすことで、力強く左に振り抜いていくのがポイント。伸ばした左ヒザを支点に体が止まるので、クラブが大きなアークを描きながら加速していくんです」(鶴見)。右に乗せた体重を左ツマ先に移動させて地面を強く踏み込む。世界の飛ばし屋たちもやるこの動きが小平はできている。
総合して「素晴らしいスイングですね」(鶴見)と、プロコーチも手放しで絶賛する完成度だ。
解説・鶴見功樹(つるみこうき)/1966年4月18日生まれ。東京都出身。99年に英国PGAメンバーに。02年に日本人初の英国PGAクォリファイプロフェッショナルを取得。04年より大山志保と師弟関係を結び、06年には賞金女王に育て上げる。今日までに指導した生徒数は10,000人を超え、現在も日本におけるただ一人の英国PGAプロフェッショナル。東京都港区三田でインドアゴルフスクール「鶴見功樹ゴルフアカデミー」を主宰している。
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