今季活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第30回は今年からプロの仲間入りを果たした小祝さくら。プロ初勝利が期待される19歳のスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が解説する。
今年のプロテストに合格し、ファイナルQTで9位に入った小祝さんです。彼女の特徴として、スイングのテンポが毎回同じことが挙げられます。慌てたためにリズムが速くなることがなく、自分の中にしっかりとテンポをつくっているので、大きなミスにつながりません。
テークバックでは、アドレスから肩と腕でできる三角形を崩さずにバックスイングを行っています。トップで左肩がしっかりと入っているところもいいですね。両肩を結んだラインと帽子のツバが同じ向きですが、それだけ肩を回しているからです。もうこれ以上回らないところまで上体を捻転しています。これだけ捻転できるのは、クラブをゆっくりと上げているからでしょう。アベレージゴルファーはスピードに頼って捻転を深くしようとしますが、それでは限度があるだけに、小祝さんのバックスイングのスピードは参考になると思います。
フォローではしっかりと左右の手が入れ替わっているのもいいですね。クラブを使い切れているので、ヘッドがしっかりと目標方向に出ています。バックスイングとフォローで右ヒジと左ヒジの高さがどちらも同じですが、きれいなローテーションが行われているからです。
ただ、気になるところはダウンスイングで首が寝ているところです。右肩が下がり、左ほほが空を向いていますが、ボールの下からクラブがあおるように入ってくることにつながります。それでも、アマチュア時代よりもよくなっているのは、インパクト後の左足です。以前は両足がぴょこんと跳んでいました。その結果、前傾姿勢が崩れて上体が起き上がってしまい、インパクトの打点が安定せず、タイミングにもバラつきがあったのです。首が寝ているのは、伸び上った体でボールを見ようとした結果でしょう。
しっかりとボールを見ることは大切ですが、肝心な体がボールを見ていない状態は避けるべきです。それで、彼女のコーチでもある私は、両足が地面をつかんでいる時間を長くすることを勧めました。ランニングや、ピッチングウェッジの長さに切ったドライバーでの素振りやショットを繰り返すことを課題として与えたのです。しっかりと腰を落とし、両ヒザの間隔を保ち、低い姿勢のままスイングすることで、重心が上がる動きがかなり減ったと思われます。その効果が出てきたのか、地面を低い姿勢でつかめ出したのはいいことですね。課題だったヘソと地面の距離も近くなりました。体の伸び上がりを防ぐ練習を行ったことで、40m/秒前後だったヘッドスピードも今では43m/秒まで向上しました。44m/秒を目指してこれからも頑張ってほしいです。今から来シーズンが楽しみで仕方がありません。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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