リランキング制度導入、賞金女王の行方、初優勝しそうな若手…などなど、国内女子ツアーは今年も見どころが盛りだくさん!そこで、森口祐子、小田美岐、村口史子とそれぞれ個性の違う解説者たちに自身の時代と重ねながら?たっぷり解説してもらった。
第三回は3人が期待する若手について。解説陣は若手女子プロたちをどう見ているのか。
小田美岐(以下、小田):この話題でここ数年、毎年挙げるのが柏原明日架さんと堀琴音さんです。本当にいつ勝ってもおかしくない二人ですが…。柏原さんは何で優勝に手が届いていないと思いますか?
村口史子(以下、村口):柏原さんは最終日の終盤の何ホールかで崩れる印象がありますね。
森口祐子(以下、森口):プロゴルファーにはいろいろな“勝ち方”があると思うんです。初日からトップでずっと突っ走れるタイプ、最終日に逆転するタイプなどなど。そこで柏原さんの一勝目はどんなかたちでくるのかという話ですが、柏原さんはとても爆発力のある選手だと思っています。その爆発力で、最終日トップと離れているところからスタートして、言い方はよくないけど「周囲があまり期待していない」順位から、「やっぱり爆発力があるからきちゃったね」という勝ち方を一度できたら、彼女はすごく強くなると思う。ただ、中々そのめぐり合わせがこないね。もう一つ何か自分でこじ開けなきゃいけない部分が彼女にはあると思う。
小田:気持ちの中でもそうですね。
森口:それが何なのか、といわれると中々分からないんだけど…。村口さんどう?
村口:彼女はプロ4年目ですし、泥臭い勝ち方でいいと思うんです。かっこよく勝とうとしているのかなと感じます。最後はなりふり構わずに、どんなアプローチ、パターでも「寄せてやる」、「入れてやる」というのをがむしゃらにやる。その気持ちがあれば勝てると思います。
森口:そういった意味では、そのような泥臭さを持っている選手が少なくなっていない?
小田:そうですよね。鈴木愛さんなんかは持っていると思う。自分のスタイルを。スイングもオーソドックスなほうではないし、泥臭いですよね。とにかく勝ちにこだわる。
村口:そうですね。本当に勝ちにこだわっている。
小田:堀さんも最後のほうになると、こっちが「もうちょっと考えて!」って思うくらいどんどんプレーが早くなっていってしまうんです。
森口:そう、テンポがね!こちらが勝手に、「この子は勝てるだろう」というのはあるんだけど、彼女のプレースタイルを見ていると、初日、二日、3日目と最終日、優勝争いに向かっていくにつれて、「えっ?同じ人」ってくらいテンポが変わるときがあるんだよね。たぶん本人も、もどかしいんだろうけど…。そこも泥臭さというかね、自分で何かこじ開けないといけない部分。
小田:それがこじ開けられたら二人ともね。一勝目に苦労した人は結構上に行くことが多いじゃないですか。逆に一勝目パーンと勝っちゃったら、二勝目に苦労するというのがあるから。一つ変われたら二人ともかなり上に行くんじゃないかなというのはあります。
森口:そう思っていて長いよね、堀さんの場合。デビューしたときからそのくらいのレベル、優勝争いができる能力があるだけにね。チャンスがここまできているのに、って。
村口:彼女はミスするとすごく悔しい顔をするじゃないですか。私はそういうのが好きなんですよ。
小田:嫌いな人はいないでしょ(笑)。
村口:でも、そこが微妙なところですよね。ふて腐れているとも受け取られかねないですし。
小田:たぶん、そういう誤解される人って、基本的に周りにじゃなくて自分に対して怒っているでしょ。そういうのが表に出ている人を私はすごくいいなと思います。私自身が最後のほうは出せなかったので。
森口:日ごろの言動と一致していればそこまで違和感はないよね。いつもアグレッシブな感じなら。たとえば上田桃子さんとか鈴木さんとかは、プレー中にすごく顔に出るんだけれども、私はそれを見たときに「次のプレーにつながっていくんじゃないか」と期待感が増すときがある。堀さんとか柏原さんが同じ状況になったときは「崩れていくんじゃないかしら」と思っちゃうタイプなんだよね。もう少し自己コントロールしてもいいのかもしれない。表情に出しても悪くならない人と、出したことによって崩れるというか、悪い方向に行くタイプ。二人の場合、本当は出さずにじーっとプレーしていたら、一緒に戦っている選手が「この子は我慢するようになった。変わったんじゃないか」って動揺するかもしれない。やっぱりメンタルの要素って大きいのかなって。村口さんはラウンドリポートで、選手の近くでしぐさなどを見る機会が多いけど、どう?一日の流れとかよく分かると思うんだけど。
村口:今の若い選手たちは、見ていても何を考えているか分からないときもありますが、気持ちのコントロールはうまいなと思います。どちらかというとひと昔前の選手は、がーっと感情を出す選手が多かった。今の選手は勝てなくても、たとえばコメントとかでも「勝てなくて悔しかった」という感じではなく、「自分の中ではいいプレーができたので」という感じで。そのあたりの気持ちは私には正直よく分からないですね。
森口:それはすごく分かる。私も負けず嫌いで、こういう仕事をしていて…。
小田:負けず嫌いじゃないプロゴルファーはいませんよ(笑)。
村口:あと、気の弱い人もいないです(笑)。
森口:そうよね。だけど今、村口さんがいったように、準備されていたかのようなコメントを出す子が多くなった。もっと普通に今の感情をぶつけて欲しいな。「ホント悔しいです!」とか。
小田:メンタルトレーナーさんとかが普及してから、そういうコメントが多くなってきたような気がします。
村口:宮里藍ちゃんとかね。
森口:あまり負のことをいわないというか。
小田:「これは失敗ではなく、次へのステップです」という感じですよね。
森口:「落ち着いている」という意味でもそうだけど、まだ勝ったことがない選手で去年、何度も上位に顔を出すなぁと思ったのは辻梨恵さん。去年一試合くらい勝つかなと思っていた。彼女のプレーはオフにフロリダで取り組んだことが実を結んだのもあって、すごく落ち着いているなと。あとお寺のお嬢さんということもあるんだけど、ルックスも可愛くて若いのに、プレーは今の若い子とは違う落ち着き方が彼女の場合あって。初優勝は近いと思う。
小田:そうですね、いつ勝ってもおかしくない。
村口:ここまでくるまでに、いろいろ失敗していろいろ考えたんでしょうね。
森口:その失敗の経験が多すぎてもだめだからね。だからこそ、「早く勝って欲しい」と期待しちゃいます。
小田:あとは、昨年プロになった人たちが本当にすごいメンバーでしたね。
森口:毎年プロテストで何人も協会に入ってくるわけだけど、去年は特に濃い。濃いプロテストだったよね。一番有名なのはすでに勝ったことのある勝みなみさんだと思うけど、そこにレギュラーツアーでも上位に入ったことのある新垣比菜さんもいて、小祝さくらさんもいて。ちょっとやってくれそうというか、落ち着いてプレーしている選手がこの年代には多い気がする。
村口:この年代の子たちはプロのトーナメントを十分経験しているのと、勝さんが優勝したことで、みんなが切磋琢磨していると思います。「あの子にできて、私にできないわけがない」みたいな感じで。
小田:小さいころから世界ジュニアや、ナショナルチームなどで一緒にやっているからそういうことを余計に感じていると思う。「あの時期は変わらなかったのに、プロの試合で勝っている」というか。ただ、今はゴルフを始めるのが早くなったからなのか、ゴルフを怖くなるのが早い選手が多くないですか?
森口:それはあると思う。
小田:昔は20代前半なんてゴルフを怖いと思う選手がいなかったのに。
森口:前は始めるのが今よりも遅いから、ゴルフを楽しくなるときが、ちょうど経験を積んで、ツアーの環境にも慣れてという相乗効果があった。だけど、今は小さいころからいいライバル。だから、人によってはどんどん追い抜かれてしまって、取り残されているという心境もあるんじゃないかな。気持ちが年寄りになっちゃうというか。
小田:ある程度の年齢に達するまでには、すでにゴルフが仕上がっていますよね。
村口:特に女の子は体ができるのが男の子と違って早いですからね。
小田:高校生くらいで出来上がっている子とかいますしね。驚くのが、若いのにパッティングが動きづらそうだなという子がいること。もう、きているのかなって思っちゃいます。
次回は【3人が最も今季期待する選手】をお届け。ご期待ください。
森口 祐子(もりぐち・ゆうこ)/1955年4月13日生まれ、富山県出身。日本女子オープンなど通算41勝を挙げ、国内女子ツアーで6人しかいない永久シード保持者の1人。一男一女の母でもある。現在は解説者としても活躍中。
小田 美岐(おだ・みき)/1959年4月5日生まれ、京都府出身。通算6勝。ティーチングプロフェッショナル資格A級も保持している。現在は解説者として国内女子ツアーだけでなく、米国女子ツアーの解説を努めることも多い。
村口 史子(むらぐち・ふみこ)/1966年8月30日生まれ、東京都出身。ツアー通算7勝。1999年には年間3勝を挙げて賞金女王の座に輝いた。2004年にツアー競技からは引退。以降は雑誌やテレビの解説、レポーターとして活躍している。
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