その昔、「マスターズ」を現地で取材したときの話だが、コース内の至るところからドーンというギャラリー(マスターズではパトロン)の大歓声が聞こえてきた。その声は日を追うごとに大きくなり、歓声の長さによってバーディなのか、イーグルなのか、あるいはホールインワンなのか予想がつくぐらいだ。
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当然、選手もそのような歓声を浴びると、気分的にも乗ってくるのか、さらにいいプレーが生まれていた記憶がある。選手にとって元気の源はバーディだというが、ギャラリーからの声援も貴重な栄養源だ。その流れは洋の東西を問わず、国内ツアーでもトーナメントが盛り上がるかどうかは、ギャラリー次第なところがある。その数が多ければ多いほど独特の緊張感が生まれるし、選手も気合いの入ったプレーを見せようとする。そのことをスポンサーも理解しているため、どの試合も様々なアイデアを盛り込み、数多くのギャラリーを集める努力を怠らない。
「マスターズ」と同週に開催された国内女子「スタジオアリス女子オープン」では、大人だけでなく、子供も楽しめる様々なイベントを用意していた。例えばキッズを対象としたチャリティパターやレッスン会、ふれあい動物園などだ。家族連れのギャラリーを増やそうという考えだが、最も人気を集めたのは、チャリティフォトだった。これは子供に限ったイベントではないが、1000円以上のチャリティを行うと、プロと一緒に写真撮影ができる。しかも、出来上がった写真はそのプロのサインとともに豪華な台紙に入れられた状態で手渡されるというシステムだ。1人のプロにつき、先着10人に限られるが、人気選手の申し込みはすぐに埋まってしまうため、競争率はかなり高い。
「このアルバムが欲しくて、毎年きています」
という吉廣徹さんが、これまで手にした今大会のアルバム数は100冊近い。今回はスタジオアリスとスポンサー契約を結ぶ堀奈津佳に申し込んだが、本来なら夜中に並ばないと10人の枠に入ることは厳しかった。というのも、毎年、この権利を求めて、朝早くからコース前に長蛇の列ができるからだ。
以前はゲートを開門した後、受付に早く着いたもの順で権利を得られたが、ケガの心配や早くから並んでも走れない人は先着10人に滑り込むことができず、数年前から整理券を配るシステムに変わった。それでも、今回は前日の夜8時にはすでに何人かが並んでいたという。確かに吉廣さんが語るように、夜中に並ばなければ、お目当てのプロとの写真を撮ることは難しいのが現状だ。
「私どもは写真を撮ることが専門の会社ですから、ほかのトーナメントよりもクオリティの高さには自信があります」(大会事務局)
ポラロイドなどで撮影する大会は多いが、今大会ではスタジオアリスで通常撮影するデジタルカメラを使用し、同じようにプリントアウトしているという。先ほどの吉廣さんも写真と装丁のクオリティが高いからこそ、手に入れたいのだという。考えた手段が、子ども優先枠の使用だ。10人中2人に与えられるもので、そのために自分のお孫さんである中尾美咲ちゃんと柚咲ちゃんの2人を連れてきた。おかげで無事に堀との写真をゲットできた。
「自分のラウンドについて応援して頂けるだけでもうれしいのに、そうやってチャリティフォトに協力して頂いて感謝しています」
とは、堀のコメントだが、今大会では2年9カ月ぶりにツアー競技での予選通過を果たし、元気な姿をファンに見せることができたと喜んでいた。
堀だけではない。どの選手も疲れているのにもかかわらず、最高の笑顔でギャラリーとの撮影会に臨んでいた。ギャラリーの大切さを分かっているからだろう。ちなみに、今年の最終日には昨年よりも519人多い7687人が会場に足を運んだ。着実に結果として表れてきたといえるのではないだろうか。(文・山西英希)
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