石川遼が、かつて手にしていた「0番」を覚えているだろうか。2012年まで用具契約を結んでいたヨネックス社の『ゼロアイアン』。アイアン形状のユーティリティだ。
2度目の大会出場となった、10年の「全英オープン」でこの0番を投入。全英オープンといえば、リンクスコース特有の強い潮風に、深いフェスキューやポットバンカーが特徴。ハザード回避が絶対のなか、5番ウッドと同等の飛距離が出て、正確にターゲットを狙えるようにと手に取って、27位タイで大会を終えた。
翌年の国内男子ツアー「日本ゴルフツアー選手権」でも0番を多用したことが話題に。「今まではフェアウェイから150ヤードより、ラフから100ヤードのほうが簡単だと思っていました。でも、色んなコースを経験して絶対ラフからじゃ寄らないコースもあると思った」と、とにかくドライバーで攻めるスタイルを封印。難コース攻略のために刻む選択肢を取った。
米ツアーでの5年間を経て、今では当然考え方も変わっている。今季の「日本プロゴルフ選手権」を終え、「ドライバーを持たない選択肢はない」と断言。体格で劣る日本人選手が海外で勝つためには、ドライバーで飛距離を出すことは最重要課題の1つ。身をもって感じていることだが、思うように振り切れない現状に、自身への不信感がぬぐえない。5戦連続予選落ちを喫した昨年の秋口と比べ、「あのときよりも悪いかもしれない」と口をつくほど、ここ2試合ではショットの不調が特に目立った。
国内本格復帰を果たしてから、今では度々ショットが曲がることに対しての「怖さ」を口にする石川。それと対照的な出来事として思い出されるのが、09年の「ミズノオープン」だ。
石川がツアー3勝目(プロとして2勝目)とともに、同年の全英オープンへの出場権をつかみ取った大会。このときも最終日にドライバーが大暴れした。12番でティショットを左のOB、打ち直しの3打目も再び左のOBとして、まさかの1ホールで「+5」。5打差で首位を快走していたが、ここでリードをなくしてしまう。
それでも「4日間の中では、4〜5個のOBはしょうがないと思っていた」と大たたきを物ともせず。チップインイーグルを奪うなど怒涛の巻き返しを見せて、2位に3打差をつけて完勝。ミスを引きずらずに優勝してみせた。
先週の「関西オープン」では「開き直りじゃないですけど、これでダメだったら仕方ないという気持ちになりました。とにかくフルスイングしていこうと」と明かした石川。本日、開幕した「ミズノオープン」では、9年前の思い切りのよさを再び取り戻すことができるか。
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